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機械の運転状態での点検

アフターマーケット事業のご紹介

軸受の温度

一般に軸受の温度は、運転開始後に上昇し、ある時間経過すれば、これよりやや低い温度(通常は室温より10~40°C程度高い)で定常状態になります。定常状態になるまでの時間は、軸受の大きさ・形式・回転速度・潤滑方法・軸受周りの放熱条件により異なりますが、20分位から数時間を要する場合もあります。

軸受の温度が定常状態にならず、異常に上昇するときは以下のような原因が考えられるので、運転を停止して対策を採る必要があります。

軸受の温度は、その軸受の適性な寿命の保持、潤滑剤の劣化防止などのために、あまり高い状態になることは好ましくなく、一般に100°C以下で使用することが望ましい状態です。

異常温度上昇の主要原因

  1. 潤滑剤の過度の不足又は過多
  2. 軸受の取付け不良
  3. 軸受内部すきまの過小あるいは、荷重の過大
  4. 密封装置の摩擦過大
  5. 潤滑剤の不適
  6. はめあい面のクリープ

軸受の音

軸受の回転音は、聴音器をハウジングに当てて音の大きさと音質を調べ、澄んだ音であれば正常と考えてよいのですが、その判断が難しく豊富な経験が必要になります。音を文字で表現するのは困難で、個人の感覚差もあるので必ずしも適切とはいえませんが、以下に軸受の典型的な異常音の特徴とその関係要因を示します。

軸受の典型的な異常音の特徴とその関係要因

音の表現 特徴 関係要因

ザー

ジャー

ジー

回転速度の変化で音質が変わらない(ごみ)

回転速度の変化で音質が変わる(きず)

  • ごみ
  • 軌道面、玉、ころの表面が荒れている
  • 軌道面、玉、ころ表面のきず
シャー 小形軸受
  • 軌道面、玉、ころ表面の荒れ
シャ シャ 断続的で規則的に発生する
  • ラビリンス部などの接触
  • 保持器とシールの接触

ウーウー

ゴーゴー
(うなり音)

回転速度の変化で大きさ、高さが変わる。特定の回転速度で音が大きい。大きくなったり小さくなったりする。サイレン、笛の音に近いときがある
  • 共振、はめあい不良(軸の形状不良)
  • 軌道輪の変形
  • 軌道面、玉、ころのびびり(大形軸受の場合は軽度の音であれば正常)

ゴリ ゴリ

コリ コリ

手動で回転させたときの感触
  • 軌道面のきず(規則的)
  • 玉、ころのきず(不規則)
  • ごみ、軌道輪の変形(部分的に負のすきま)

ゴロ ゴロ

コロ コロ

大形軸受

小形軸受

)

高速になると連続音

  • 軌道面、玉、ころ表面のきず

ウィーン

ウィーン

ウー

電源を切った瞬間に止まる
  • モータの電磁音
チリッチリッ

不規則に発生(回転速度の変化では変わらない)

主に小形軸受

  • ごみの混入

チャラチャラ

カラカラ

パタパタ

バタバタ

)

円すいころ軸受

大形軸受

 

小形軸受

)

規則的で高速では連続音

  • 保持器音で澄んだ音なら正常
  • 低温時ならグリース不適→柔らかいものが良い
  • 保持器ポケットの摩耗、潤滑不足、軸受荷重不足による運転

カチ カチ

カチンカチン

カチャカチャ

低速で目立つ

高速では連続音

  • 保持器ポケット内の衝突音、潤滑不足。内部すきまを小さくするか予圧すると消える
  • 総ころの場合は、ころ同士の衝突音

カーンカーン

カン カン

金属的大きな衝突音

低速の薄肉大形軸受(TTB)など

  • 転動体のはじける音
  • 軌道輪の変形
  • キーのきしみ

キュルキュル

キュ キュ

ジャージャー

主に円筒ころ軸受で回転速度の変化により変わり、大きいときは金属音に聞こえる。グリースを補給すると一時的に止まる
  • 潤滑剤(グリース)のちょう度過大
  • ラジアル内部すきま過大
  • 潤滑剤不足

キー キー

ギー ギー

キーンキーン

金属間のかじる音

甲高い音

  • ころ軸受のころとつば面のかじり
  • 内部すきま過小
  • 潤滑剤不足
ピチ ピチ 小形軸受で不規則に発生
  • グリース中の気泡の潰れる音

ピシピシ

ピンピン

不規則にでるきしみ音
  • はめあい部の滑り
  • 取付け面のきしみ
  • キーなどのきしみ
全体的に音圧が大きい
  • 軌道面、ころ、玉の表面が荒い
  • 摩耗による軌道面、ころ、玉の変形
  • 摩耗による内部すきま過大

軸受の振動

運転中の機械の振動を測定すれば軸受の損傷を早期に知ることができます。すなわち、振動の振幅、周波数を定量的に測定分析することにより軸受の損傷の度合いを推定できます。しかし測定位置や軸受の使用条件により測定値が異なってくるので、個々の機械設備ごとに測定データを蓄積して、判定基準を設定しておくことが望ましいことです。

NTNでは設備の振動から軸受の異常検知や損傷部位の推定を可能とする「NTNポータブル異常検知装置」をご用意しています。

NTNポータブル異常検知装置

潤滑剤の選定と補給について

軸受を潤滑する目的は、軸受の転がり面及び滑り面に薄い油膜を形成して、金属面同士が直接接触するのを防ぐことで、次の効果があります。

  1. 摩擦及び摩耗の軽減
  2. 摩擦熱の排出
  3. 軸受寿命の延長
  4. さび止め
  5. 異物の浸入防止

これらの効果を発揮させるために、潤滑剤の選定に際しては次の事項を参考にしてください。

グリース潤滑

グリースは、取扱いが容易で、密封装置の設計も簡素化することができるため、転がり軸受の潤滑に最も多く用いられています。グリースの選定は、基油、増ちょう剤、添加剤の種類及び性状をよく吟味し、軸受の使用条件に適合するグリースを選びます。またグリースのちょう度と用途についての一般的な関係を参考として表1に示します。なお、グリースの種類及び特性についてはNTN転がり軸受総合カタログをご参照ください。

表1 潤滑油粘度の選定指定例

NLGL
ちょう度番号
JIS(ASTM)
60回混和ちょう度
用途
0 355~385 集中給脂用
1 310~340 集中給脂用
2 265~295 一般用、密封形軸受用
3 220 ~250 一般用、高温用
4 175~205 特殊用途

油潤滑の場合

一般に油潤滑は、グリース潤滑より高速回転又は高温での用途に適しています。また、軸受から発生する熱量あるいは軸受に加えられる熱量を外部に排除する必要のある場合には油潤滑が適しています。転がり軸受の潤滑には、その運転温度において、表2に示す粘度が必要です。

潤滑油の選定に当たっては、粘度、粘度指数、酸化安定性、防せい、消泡性などを十分に考慮する必要があります。表3に潤滑油粘度の選定指針例を示します。 また、図1に潤滑油の粘度―温度線図を示します。運転温度において、適正な粘度をもつ潤滑油を選定するのに用います。

表2 軸受の必要粘度

軸受形式 動粘度 mm²/s
玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受 13
自動調心ころ軸受、円すいころ軸受、スラスト針状ころ軸受 20
スラスト自動調心ころ軸受 30

表3 潤滑油粘度の選定指針例

軸受の運転温度
°C
dn値
×104
潤滑油のISOの粘度グレード(VG) 適用軸受
普通荷重 重荷重又は
衝撃荷重
-30~0 許容回転速度まで 22 32 46 全種類
0~60 ~1.5 46 68 100 全種類
1.5~8 32 46 68 全種類
8~15 22 32 32 スラスト玉軸受を除く全種類
15~50 10 22 32 単列ラジアル玉軸受、
円筒ころ軸受
60~100 ~1.5 150 220 全種類
1.5~8 100 150 全種類
8~15 68 100 150 スラスト玉軸受を除く全種類
15~50 32 68 単列ラジアル玉軸受、
円筒ころ軸受
100~150 許容回転速度まで 320 全種類
0~60 46 68 自動調心ころ軸受
60~100 150
備考
  1. 潤滑法は油浴又は循環給油の場合。
  2. 使用条件が本表記載範囲外の場合はNTNにご照会ください。

図1 潤滑油の粘度-温度曲線

図1:潤滑油の粘度-温度曲線

潤滑剤の補給及び交換限度

グリースの場合は使用時間の経過とともに潤滑性能が低下するので、適当な間隔で新しいグリースを補給しなければなりません。グリースの補給間隔は、軸受形式、寸法、回転速度、軸受温度及びグリースの種類などによって異なります。

NTN転がり軸受総合カタログにグリースの補給間隔の目安となる線図が記載されていますので、ご参照ください。

油潤滑の場合の交換限度は、機械の使用条件、給油方法などにより異なりますが、潤滑油の性状分析試験による大まかな交換限度及び試験頻度の間隔の目安を表4表5に示します。

表4 潤滑油の性状と交換限度例

性状 交換限度 摘要
ギヤ油 その他の油
新油に対し粘度変化 mm²/s 25%以内、10~15%が望ましい 10%以内 酸化劣化の進行、異種油の混入
水分体積 % 0.2以下 0.2以下 脱水すれば再使用可能な場合がある
不溶解分の重量 ノルマル
ペンタン %
1.0以下 0.2以下 添加剤カーボン摩耗粉
ベンゼン % 0.5以下 0.9以下 じんあい
沈澱値 ml/10ml   0.1以下 水分、じんあいなど異物、金属摩耗粉
全酸価 KOHmg/g 新油の2~3倍 添加剤によって高い値をとる
灰分 % 0.2以下 -  
灰分中の鉄分 % 0.1以下 -  

表5 潤滑油の性状試験頻度

潤滑法 点検期間
普通の運転条件 過酷な運転条件
ディスク給油法 1年毎 6か月毎
油浴、飛沫給油法 6か月毎 3か月毎
循環給油法 9か月毎 1~3か月毎

過酷な運転条件とは下記の条件のときです。

  1. 水分の凝縮、又は浸入が著しい。
  2. 粉じんガスなどの浸入が著しい。
  3. 運転温度が120°C以上となる。