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ベアリングって何?

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ベアリングの構造と種類

ベアリングは「ボール」と「ころ」

ベアリングは、内輪と外輪、ボールの3層で構成され、内輪と外輪のあいだにボールがたくさんあります。ボールが転がる内輪と外輪を「軌道輪(きどうりん)」といい、ボールのことを「転動体(てんどうたい)」といいます。転動体には球状の「ボール」と、「ころ」があります。
また、転動体が軌道輪から外れたり、ボール同士がぶつかったりするのを防ぐ部品を「保持器(ほじき)」といいます。

「ボール」と「ころ」の違い

ボールやころなどの転動体を使うベアリングを「転がり軸受」といいます。転がり軸受は、転動体や軌道輪の形によってさまざまな種類にわかれており、それぞれ特徴を備えています。
一般的に、ボールを使うベアリングは高速回転に適しており、“ころ”を使うベアリングは大きな力に耐えられるようになっています。

ベアリングの歴史

重い石を“ころ”で運んだ

ベアリングの歴史は、紀元前にさかのぼります。当時、巨大な建造物をつくるために、大きくて重い石を運ぶ必要がありました。いまのようにクレーンやブルトーザもない時代です。どのようにして石を運んだのかというと、地面に円柱形のころを置いて運んだといわれています。“ころ”が転がることでまさつを減らして石を運んだのです。

“ころ”からベアリングへ

“ころ”を転がして重たいものを運ぶ技術は、ベアリングの原点ともいわれています。地面に並べた“ころ”を円形にすると、現代のベアリングの形に近づきます。ベアリングの原点は、古代の頃から用いられていた、重いものを運ぶための知恵にあるのです。

産業革命で鉄製のベアリングが普及

18世紀後半にイギリスで起きた産業革命以降、ベアリングの重要性は高まり、ボールを使ったベアリングが登場しました。
19世紀にはいって、硬い鋼の製造に成功すると、頑丈で、小さいベアリングを作れるようになりました。こうしてベアリングは、自動車をはじめさまざまな産業の発展を後押しするようになりました。

レオナルド・ダ・ビンチは
「ボール」を使ったベアリングを考えていた!

15世紀に活躍した万能の天才、レオナルド・ダ・ビンチは、今のベアリングの基礎となるスケッチを残しています。彼が考えていたのは、“ころ”の代わりに玉を使った、いまのボールベアリング。現代とほぼ同じ構造のベアリングを、ベアリングが大きく普及する前からすでに考えていたのです。

ベアリングの活躍

自動車に100個~150個も使われている

自動車の動力を作り出すエンジンや、エンジンのパワーをコントロールするトランスミッション、タイヤの中心部のハブなど、自動車のさまざまなところでベアリングが活躍しています。1台あたりに使用されるベアリングの数は、なんと100個から150個。安全で快適なドライブには欠かせない部品なのです。

鉄道車両の高速走行を支える

鉄道車両にもベアリングが使われています。車輪を回す車軸のほか、車軸の回転を生み出すモータや、モータの回転を車軸に伝えるための駆動装置などにベアリングが使われています。時速300km/hもの速さで走る高速鉄道の秘密は、ベアリングにあります。

飛行機のエンジンで高速回転している

飛行機が空を飛ぶための動力を生むジェットエンジンや、離陸や着陸に欠かせない車輪、さらに扉やエアコンなどにベアリングが使われています。飛行中のジェットエンジンは1分間に約1万回も回転し、温度は200℃以上にもなります。ジェットエンジンには高温下で高速回転できるように、特殊な材料を使ったベアリングが使われています。

巨大な風力発電装置で使われている

風の力で羽根を回して電気をつくる風力発電装置には、高さが100m以上のものがあります。羽根の回転を伝える主軸に使われているベアリングは、大きいもので直径2m以上、重さは約2tにもなります。主軸のほかにも、軸の回転スピードを上げる増速機や電気を作り出す発電機など、風力発電装置の大切な部分にさまざまなベアリングが使われています。

ベアリングのボールは
「地球上でもっとも完全な“まる”」

ベアリングのボールに凹凸やゆがみがあると、なめらかな回転になりません。
そのため、ベアリングのボールは、凹凸の差がサブミクロン(1万分の1ミリ)以下になるよう、徹底的に磨き上げられます。あかちゃんの髪の毛の太さが約0.1mmですので、その1,000分の1の凹凸しかないぐらい、まんまるなんです。

用途に応じたベアリング

荷重のかかり方とベアリングの種類
(ラジアルかスラストか)

ベアリングには機械の重さや動きによって、さまざまな方向から力がかかります。ベアリングが支えている軸に対して垂直方向にかかる力を「ラジアル荷重」といい、軸に対して水平方向にかかる力を「アキシアル荷重」といいます。
これらの荷重を受けるのに適したベアリングがあり、ラジアル荷重を受けることに特化したベアリングを「ラジアルベアリング」、アキシアル荷重を受けることに特化したベアリングを「スラストベアリング」といいます。ベアリングを選ぶ際は、転動体の種類(ボールか“ころ”か)に加えて、荷重の受け方(ラジアルかスラストか)も考えなくてはいけません。

ベアリングの分類(ボールか“ころ”か、ラジアルかスラストか)

形状や機能によりさまざまなベアリングがあります

転動体や外輪、内輪の形によって、さまざまなベアリングがあり、それぞれ特徴的な機能をもっています。代表的なベアリングについてご紹介します。

凡例
  • 深溝玉軸受

    深溝玉軸受

    ボールを使った最も一般的なベアリング。ラジアル荷重を受け、高速回転に向いており、さまざまな分野で幅広く使われています。

  • アンギュラ玉軸受

    アンギュラ玉軸受

    ボールが内輪と外輪に接触する角度をななめ(アンギュラ)にしたベアリング。ラジアル荷重とアキシアル荷重を受けることができます。

  • 円筒ころ軸受

    円筒ころ軸受

    円筒形のころを用いたベアリング。ラジアル荷重を受けます。ころを用いているため、大きな力や衝撃に耐えることができます。

  • 円すいころ軸受

    円すいころ軸受

    円すい形のころを用いたベアリング。ころが転がる内輪と外輪の転走面も円すい面となっており、ラジアル荷重とアキシアル荷重を受けることができます。

  • 針状ころ軸受

    針状ころ軸受

    細長いころを多数用いたベアリング。ラジアル荷重を受けます。内輪や外輪が薄く、細いころを多数使用していることから、ベアリングの大きさに対して、大きな力に耐えることができます。

  • 自動調心ころ軸受

    自動調心ころ軸受

    球面ころと呼ばれるたる型のころを使用したベアリング。ラジアル荷重とアキシアル荷重を受けます。ころが転がる外輪の転走面が球面になっているため、軸のたわみや傾きに対応することができます。

ベアリングの種類

ボールやころを使わない「すべり軸受」

ベアリングにはボールやころなどの転動体を使わない「すべり軸受」というものがあります。プラスチックを加工した「樹脂軸受(じゅしじくうけ)」や、金属の粉を焼き固めた「焼結含油軸受(しょうけつがんゆじくうけ)」などがあります。水に強いものや、電気を通さないものなど、材料によってさまざまな特徴があります。