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2022年

2021年度日本トライボロジー学会 論文賞・技術賞を受賞2022年4月26日広報ニュース

NTN株式会社(以下、NTN)は、一般社団法人日本トライボロジー学会*1より「2021年度日本トライボロジー学会 論文賞」ならびに「同 技術賞」を受賞しました。受賞テーマは「残留応力測定と接触解析で得られたSN曲線を用いたピーリング*2寿命の推定方法」(論文賞)および「トランスミッション用シール付転がり軸受の低フリクション化技術」(技術賞)です。研究・技術における新規性、独創性、産業への貢献などが評価され、両賞を受賞しました。

  1. トライボロジーに関する学術および科学技術を振興する事業を行い、トライボロジーに関する理論の進歩および技術の向上に寄与することを目的とした学会
    【参考】日本トライボロジー学会HP: https://www.tribology.jp/
  2. 表面粗さの突起接触部での転動疲労による微小剝離の集合体(論文中ではmicropitting)

1. 「2021年度日本トライボロジー学会 論文賞」の受賞について

高精度な寿命推定法により、年々過酷さを増す使用条件に対して最適な軸受仕様を提案

受賞者名 NTN 先端技術研究所・主任 長谷川 直哉
NTN 商品化戦略部・部長 藤田 工
岩手大学 理工学部・教授 内舘 道正
兵庫県立大学 大学院工学研究科・教授 木之下博、准教授 阿保 政義
受賞テーマ 「残留応力測定と接触解析で得られたSN曲線を用いたピーリング寿命の推定方法」
(Estimation Method of Micropitting Life from S-N Curve Established by Residual Stress Measurements and Numerical Contact Analysis)

カーボンニュートラルの実現に向け、環境負荷低減の要求がますます高まる中、機械においては電動化や小型・軽量化、低摩擦化などの技術開発が進められています。例えば、自動車などの電動機では小型化・高速化が進み、潤滑油の攪拌抵抗による発熱量の低減と低フリクション化を両立できる潤滑油の低粘度化が検討されています。また、電動機のトランスミッションの補機として使われるオイルポンプでも小型化が進んでおり、ポンプの負荷を下げるために潤滑油のさらなる低粘度化が検討されています。潤滑油の低粘度化は、機械に使用されている転がり軸受の潤滑条件を過酷にします。NTNは、この市場トレンドに対応し、過酷な潤滑条件で使用される転がり軸受の正確な寿命推定の研究に先行して取り組んできました。

潤滑油の低粘度化は、運転中の転がり軸受の油膜厚さを薄くする要因であり、転がり軸受の接触面におけるピーリングの発生を助長します。ピーリング寿命は十分な油膜形成下の寿命に比べて短く、正確に予測することは困難でした。本寿命推定法は、大学との共同研究により当社が明らかにしたピーリングの発生メカニズムに基づいており、運転中の転がり軸受の残留応力と表面粗さの変化を、転動試験で検証することで、従来よりも精度の高い寿命推定を実現しています。これまで、寿命推定は理論により算出されるのが一般的でしたが、当社は実験結果を取り入れることで、従来法よりも信頼性と合理性の高い寿命推定法を開発しました。

【受賞理由】

本提案法は、ピーリングの発生を未然に防ぐための転がり軸受の表面粗さの設計や表面処理の必要性の判断に活用できるほか、信頼性と製造コストを両立しながら適切な軸受の仕様を検討できる技術です。また、低粘度油の使用可否の見極めや潤滑油への添加剤の必要性、転がり軸受の信頼性と低フリクション化の両立の検討にも適用が可能です。さらに本技術は、使用中の転がり軸受の表面粗さと残留応力の測定から、軸受の余寿命の推定も可能であることから、適切なメンテナンスを通じてお客さまの設備の安定稼働にも貢献できます。研究内容の新規性と独創性だけでなく、産業の発展に貢献する技術として高く評価され、論文賞の受賞となりました。

2. 「2021年度日本トライボロジー学会 技術賞」の受賞について

自動車用軸受の低トルク、長寿命を両立。高速回転対応でEV・HEVなどの進展にも貢献

受賞者名 NTN 先端技術研究所・主任 水貝 智洋
NTN 自動車事業本部 自動車軸受技術部・主任 佐々木 克明、主任 和久田 貴裕
受賞テーマ 「トランスミッション用シール付転がり軸受の低フリクション化技術」

自動車の省燃費化に伴い、トランスミッション用軸受においては長寿命に加え、さらなる低フリクション化が求められています。また、潤滑油中に存在するギヤの摩耗粉などによる軸受の寿命低下を抑制するため、軸受に接触タイプシールを使用し、異物の侵入を防ぐ対策などがありましたが、シール部が軸受内輪に接触することで回転トルクが増加する課題がありました。

軸受の長寿命化や低フリクション化、高速化への対応といった市場ニーズに対応するため、NTNが開発した本技術は、軸受の接触シールの摺動面に円弧状の微小突起を等間隔に設けた新開発の接触タイプシールにより、回転トルクを従来品比で80%低減するものです。接触タイプシールでありながら、非接触タイプシールと同等の回転トルクを実現することで、高い周速条件でも従来品に比べて温度上昇を大幅に抑えることに成功しました。また、開発のポイントとなった突起高さは微小で、寿命を低下させるサイズの異物を遮断することにより、異物が無い環境下と同等の軸受寿命を確保し、低トルクと高い信頼性を両立しています。

トランスミッション用「超低フリクションシール付玉軸受」 トランスミッション用
「超低フリクションシール付玉軸受」

商品の断面図(左)と開発のポイントとなった円弧状の微小突起(黄色部) 商品の断面図(左)と開発のポイントとなった
円弧状の微小突起(黄色部)

【受賞理由】

本技術により、トランスミッション用軸受の回転トルクを従来品から大幅に低減し、自動車の省燃費化に貢献します。また、従来品に比べ異物潤滑下寿命は5倍以上と長寿命を実現しており、軸受サイズの小型化、ひいては自動車の軽量化にも寄与します。さらに、従来の接触タイプシール付軸受に比べて2倍以上の周速に対応でき、EV化に伴う高速化にも対応が可能です。これらの点が評価され、技術賞の受賞となりました。

ご参考(技術賞)

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