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マネジメント・コミットメント

新たな100年への第一歩
なめらかな社会実現へ向けての胎動

  • 取締役
    代表執行役 執行役社長
    CEO(最高経営責任者)
  • 大久保博司

2019年3月期の総括

厳しい滑り出しの「DRIVE NTN100」

中期経営計画「DRIVE NTN100」の初年度である2019年3月期の売上高は7,336億円で、前期比-1.5%、108億円の減収となりました。 事業形態別では、産業機械市場向けと補修市場向けの販売が好調でしたが、自動車市場向けでは、中国と欧州地域を中心に販売が減少しました。米中貿易摩擦による影響を受けて中国では昨年後半から需要が急減し、また欧州においては完成車メーカの新燃費測定基準の対応遅れや米国政府による対イラン制裁などの影響で需要が減少しました。
営業利益は269億円で、前期比で-32.0%、127億円の減益となりました。販売の規模減少に加えて、鋼材や副資材の高騰、米国政府による追加関税実施の影響を受けて費用が増加したことが要因です。また、170億円の減損損失を含む193億円の特別損失を計上したことで、親会社株主に帰属する当期純利益はマイナス70億円、5期ぶりの赤字となりました。

前述の減損は、国内製造部門の設備などの固定資産を対象としたものです。減損の背景には、当社の国内生産における構造的な課題があります。

国内生産における投資効率の低下

現在、国内では製造拠点および複数の製造子会社が生産活動を行っています。この十数年で国内市場は成熟化が進み、生産の分散化と製造子会社における人件費の増加などを受けて、当初の想定とは異なり効率的な生産がしづらい状態へと変化してきました。

国内における本社経費の増加

国内市場が伸び悩む中で、当社は海外市場における事業拡大に注力し、研究開発や生産技術、品質管理など、これまで本社主導で強固な海外サポートを行ってきました。合理的に算定できる費用については海外子会社へ割り当てていますが、それでも本社の費用負担は増加しています。このような中、原価低減の活動により利益を稼いできましたが、直近の鋼材や副資材の高騰をはじめとする急激なコストの増加を受けて、利益が出にくい状況となってきました。今後は、国内の製造部門においては構造改革を加速し、利益を稼ぐ体質改善を早急に進めてまいります。
2019年3月期は厳しい決算となりましたが、営業利益と経常利益では黒字であり、当社の中期的な視点における安定配当の考え方から、配当金は一株あたり中間・期末に7.5円、年間では15円とさせていただきました。2020年3月期は補修市場の販売拡大や外部調達コストの低減により収益改善を行うことで親会社株主に帰属する当期純利益の回復を見込んでおり、配当は年間15円と、前年度と同額を予定しております。

2年目の重点的な取り組み

「DRIVE NTN100」では、この先の持続的な事業の成長とそれを支える経営基盤の強化を進めています。調達改革、工数とリソースの構造改革、サプライチェーンマネジメント強化、投資の集中に取り組んでいきます。
さらに、中期経営計画の2年目は、重点的に以下の3つの改革を進めます。

自前主義からの脱却

当社ではこれまで鍛造や旋削など製造前工程から組立まで一貫生産してきましたが、今後は前工程のアウトソースを拡大します。さらに、完成品についても、汎用品はOEM供給などのアウトソースを加速します。

調達改革

主要なサプライヤーと連携を強化することで調達先を集中し、大幅な原価低減を進めます。また、現地調達を基軸に最適地調達を拡大し、為替や関税などのリスク低減につなげていきます。

事業再編

国内では、和歌山新工場を中心にラジアルベアリングの生産再編を行い、高機能商品や高付加価値商品の生産に注力します。海外ではアセアンやインドなど今後大きな成長が期待できる地域へ投資を集中するとともに、アライアンスを活用したOEM供給を拡大していきます。
これらの構造改革を実施することで、早期にグローバル事業を支える強固な経営基盤を構築してまいります。

“変革”の実践

“変革”の胎動

「DRIVE NTN100」には、前中期経営計画「NTN 100」で打ち出した“変革”を加速させるという決意が込められています。変革は遂行すれば終わりではなく、その後には次の変革が始まります。それならば変革という言葉を使わなくてもよいと思われるかもしれませんが、企業は常に創造を伴う変革を実行し、変わり続けなければなりません。
昨年のNTNレポートでは、社外取締役対談において忌憚のないご意見をいただきました。厳しいご指摘もあり、開示することでさまざまな反響があることが予想されましたが、ありのままを掲載することが経営の透明性につながるものと考えました。社内外、特に投資家の皆さまからは評価の声をいただくことができました。
私は社内で変革の必要性を繰り返し述べていますが、実際に従業員はどう感じているのか率直な意見を聞く場を設けたいと思い、従業員とのダイアログの機会を初めて持ちました。

従業員とのダイアログの様子

グローバル本社としての意識改革

前述の社外取締役対談で、当社の本社部門はグローバル本社の自覚が足りないのではないかという問題点のご指摘がありました。当社は海外売上高が7割とグローバル展開していますが、社外取締役からのご指摘のとおり、本社の各部門がグローバルに責任を持つという意識を植え付けていくことが課題であると認識しています。
しかし、少しずつ変化の兆しもあります。例えば、調達部門が海外からの見積も取るようになったのは、ここ2~3年での変化です。従来の地域ごとに加え、グローバルで集中的な購買を進めることで調達メリットの拡大を図っています。それをさらに加速するため、本年1月には、欧州子会社NTN-SNRからエルベ ブルロを本社の調達部門のトップに据えました。

収益体質の強化

中長期的に収益体質の強化を図るための施策も進めています。
IT基幹システムについては、ここ数十年は大きな刷新をしていませんでした。最新システムを導入することで、需要や生産に関する情報を一元管理し、効率的な在庫保有とリードタイムの短縮を実現するとともに、業務工数の削減を図ります。 和歌山新工場では、IoT、AI、ロボットを活用し、スマートファクトリ化を推進しています。製造工程の自動化により省人化を図るとともに、リードタイムを短縮し、製造コストを削減します。
間接部門では、今後国内で予想される労働人口の減少を見据えて、業務を代行・自動化するRPA(Robotic ProcessAutomation)を導入しました。技術部門ではRPAにより1件の作図時間が30分から7分に短縮できるなど成果も上がっています。定型業務はすべて機械に置き換え、人員を増やすことなく新たな業務への取り組みを進めます。

IT基幹システム刷新によるサプライチェーンマネジメント強化

CAE開発研究所の設立

情報通信技術の急速な発展やグローバルな競争の激化に伴い、産業界における研究開発にはかつてないほどのスピードが求められる中、当社は産学連携を強化し、最新技術を取り込んだ研究開発を進めています。
2018年10月には、当社の研究開発をさらに加速するため、CAE開発研究所を新たに設立しました。CAE(ComputerAided Engineering)とは、コンピュータが製品の設計や構造の解析、各種実験などをシミュレーションすることで、短時間で必要な結果を得られ、研究・開発の効率化かつ開発スピードアップにつながる技術です。CAE開発研究所では、自動車や産業機械、新領域も含めたNTNグループのCAE分野の研究開発を担います。産学連携では、国立大学法人大阪大学大学院工学研究科に「NTN次世代協働研究所」を開設しました。その先端技術を取り込むことで、NTN独自のCAE技術を追求します。論理的なデータに基づく信頼性の高い技術提案をタイムリーに行うことで、お客さまの開発スピードアップに貢献してまいります。

新たな価値の提供に向けて

基盤技術を活用して新領域へ展開

自動車業界ではCASE*と呼ばれる大きな変化が起きていますが、当社の基盤商品であるハブベアリングとドライブシャフトは自動車の足回りに使用される必要不可欠な商品です。EVメーカへの採用実績も増えており、今後も販売拡大を見込んでおります。

*Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared/Service(シェアリング/サービス)、Electric(電動化)

さらに、電動化に向けた新商品の開発を加速しています。ハブベアリングにステアリングの補助機能を搭載した「sHUB」、ハブベアリングとモータを一体化した「eHUB」、ポンプやブレーキの電動化に対応する「電動モータ・アクチュエータ」などの新商品により新たなニーズに取り組んでいきます。
産業機械市場では、省人化に向けてロボット関連の需要が増加します。当社は、ロボット用のモジュール商品として「i-WRIST」を開発し、外観検査用にすでに量産を開始しています。本商品は人の手首のような動きで高速に位置決めを行うことで、これまで人手に頼ってきた作業の自動化に貢献します。
風力発電装置については、故障すると発電が停止し電力供給に支障をきたすことから、モニタリングにより異常を検知する必要性が高まっています。当社は、風力発電装置用の状態監視システム(CMS)により、遠隔操作で早期に異常を検知することで大きな故障を未然に防止し安定稼働に寄与しています。CMSは鉄道車両や工作機械などさまざまな分野に適用できる技術であり、今後さらなる展開が期待できます。
産学連携では、国立大学法人大阪大学と共同でAIを活用したベアリングの余寿命予測を進化させる研究を行っています。これらが実現すれば、自動車や産業機械などに使用されるすべてのベアリングのモニタリングが可能となり、安心・安全に大きく貢献できることから、早期実現を目指してまいります。

自然エネルギーを活用した商品で防災・減災に貢献

当社は基盤技術を通じてエネルギーロスを低減させるだけではなく、自然エネルギーを活用した商品の開発にも取り組んでいます。地域でエネルギーを創出し、地域で消費する地産地消型エネルギーの提案を進め、低炭素化社会の実現に貢献します。 「NTNマイクロ水車」は、農業用水路などの既存の水路に置くだけで高効率に発電が可能であり、2018年の「第28回日経地球環境技術賞 優秀賞」を受賞しました。有効活用されていない水路から多大なエネルギーの創出が可能な画期的な商品であり、持続可能な社会の実現のためにも注力していきたいと考えています。 「NTNグリーンパワーステーション」(旧称:NTNハイブリッド街路灯)は、電設工事が不要な独立電源です。風力と太陽光で発電した電力をバッテリーに充電し、蓄電した電力で夜間にLED照明を自動点灯することが可能です。 近年、大規模災害が頻発し、非常時における電力確保の体制構築が社会的な課題のひとつとなっています。この社会的課題の解決のため、当社が新たに開発したのが、コンテナ収納移動型独立電源「N3 エヌキューブ」です。風力・水力・太陽光の3つの自然エネルギーによる発電装置と蓄電池を格納し、災害時に迅速に少人数で設置でき、非常時の燃料補給も不要です。 当社の基盤技術を活用した自然エネルギー商品を通じて、エネルギーや環境に関するSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも貢献しています。

商品展開例(風車、水車、太陽光パネル、蓄電池を完備)

「なめらかな社会」の実現に向けて

従業員の拠り所「NTNスピリット」

当社の創業者精神とは「開拓者精神」と「共存共栄精神」です。これらは「新しい技術の創造と新商品の開発を通じて国際社会に貢献する」という企業理念に込められ、100年にわたり脈々と受け継がれてきました。企業理念に基づいて事業活動を行う上で、従業員として目指すべき意識・行動を明文化したのが「NTNスピリット」です。
NTNスピリットを世界中の従業員に知ってもらうために、昨年11月には「NTNスピリットブック」を作成し、NTNグループの従業員に配布しました。また、共感と理解を深めるために、「企業理念について考える会」を開催し、経験談の共有や意見交換などを行っています。参加した海外幹部からは「カードやポスターの配布だけでは『自分ゴト化』できない」「時間をかけてでも現地での研修が必要である」といったとても前向きな意見が寄せられました。企業理念に基づく活動を評価する「NTN PROUD AWARD」は本年2回目を迎え、企業理念の実践を促しています。
これらの活動を通じて、当社の長期ビジョン「NTNのあるべき姿」のひとつである「世界中の従業員に企業理念が浸透し、自ら考え、自ら行動する企業」を目指してまいります。

NTNスピリットブック

ESGの取り組み

当社は、企業理念の実践を通じてESG課題に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献します。国連グローバル・コンパクトには2015年に署名し、人権・労働・環境・腐敗防止からなる4分野・10原則を支持するとともに、SDGsを意識した事業活動を行っています。
ベアリングをはじめ当社のエコ商品によりさまざまな産業におけるエネルギーロスを低減するとともに、自然エネルギーを活用した商品によりエネルギーを創出することで社会課題の解決に取り組んでいます。また、省エネルギー技術や環境について、楽しみながら学べる体験型の「NTN回る学校」を国内外で開催しており、持続可能な社会を担う子どもたちへの次世代育成にも注力しています。
なお、昨年12月末、「ESG説明会」を初めて開催し、機関投資家の方々にこれらの活動を説明するとともに対話を通じて当社のESG課題を認識し、今後の取り組み強化につなげています。

初めて開催した「ESG説明会」

持続可能な社会の発展に貢献

当社は、創業100周年を機に「世界をなめらかにする仕事。NTN」というコミュニケーションワードを打ち出しました。社会がかつてない環境の変化に直面している今、社会の持続的発展に、当社の技術力やサービスにより貢献してまいりたいと考えています。
私たちはこれからも「なめらかな社会の実現」に向けて変革を続けてまいります。皆さまには変わらぬご愛顧、ご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

当社は、迅速な意思決定機構・業務執行機関の構築、経営の監督機能の強化や透明性・公正性の向上を図ることを目的に、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行いたしました。