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CFOメッセージ

執行役CFO 山本正明
グローバル企業としての持続的成長を可能にする
経営基盤の確立に向けて
執行役CFO
山本 正明

NTN再生シナリオの実現には自動車事業の再建が急務であり、インフレコストの売価転嫁の徹底と調達改革による比例費低減、固定費コントロールの継続により、2024年3月期での営業損失解消を必達目標とします。

2023年3月期実績と2024年3月期見通し

2023年3月期実績

1. ポイント

2023年3月期は、売上高7,740億円(前期比20.6%増)、営業利益171億円(同149.2%増)、経常利益120億円(同76.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益104億円(同41.2%増)と前期比では増収増益でした。2022年10月に公表した業績見通しからは、営業利益は△34.2%の減益、経常利益は△47.6%の減益、親会社株主に帰属する当期純利益は△13.6%の減益の結果となりました。業績見通しからの減益の主要因は、自動車顧客向けの需要回復が遅れることを見越し、キャッシュ・フロー重視の観点から第4四半期に生産調整を行ったことや、協力メーカからの値上げ受入れを含む比例費の追加的な上昇、売価値上げの未達等です。一方で、売上高が変動する中での固定費コントロールや、フリー・キャッシュフローおよびネットD/Eレシオの改善については、それぞれの対策を着実に実行した結果が示され、公表値を達成いたしました。
事業形態別の損益については、自動車事業は比例費の追加的な上昇、売価値上げ未達、利益率が高い中国事業でのロックダウンの影響等が大きく、4期連続で営業損失が継続する厳しい結果となりました。一方で、アフターマーケット事業および産業機械事業は過去最高の営業利益となり、中期経営計画「DRIVE NTN 100」Phase 2で掲げた営業利益率目標を1年前倒しで達成いたしました。なお、配当につきましては3期ぶりに復配し、年間5円の配当を実施させていただきました。

2. 利益分析(前期比)

2022年3月期通期〈実績〉vs 2023年3月期通期〈実績〉

利益増加要因(607億円)の内訳

最大の利益増加要因は売価レベル339億円です。鋼材ほか比例費上昇や海上運賃高騰等のインフレコストの売価転嫁を進めましたが、自動車顧客向けを中心に一部未達となりました。規模等121億円は販売・生産増の影響(99億円)と在庫評価の影響ほかです。これに為替の影響146億円を加え、利益増加要因は607億円となりました。

利益減少要因(504億円)の内訳

比例費はエネルギー価格を含む諸資材の上昇370億円に対して、調達改革を含めた原価低減56億円を行い、314億円の利益減少要因となりました。足元では前期の原高370億円と比較すると、特に鋼材価格の上昇ペースは落ち着いてきたものの、依然としてインフレコストは継続しています。
固定費については人件費増が107億円、経費等増が83億円、合計190億円の利益減少要因となりました。人件費増の主な要因は米州で人件費高騰および生産混乱の特殊要因で60億円の増加となったことです。また、経費等についても、海上運賃の高騰を主因とした運送費の増加75億円、日本での基幹システム本格稼働に伴う償却費増18億円等の特殊要因があり、これらの特殊要因を除いた固定費の増加は37億円で物量ベースの売上増268億円の15%以下に抑制しております。

2024年3月期見通し

1. ポイント

2024年3月期の重要課題は、前期に引き続きインフレコストの売価転嫁を強力に推進するとともに、調達改革を含めた比例費削減と固定費コントロールを着実に進めることです。事業形態別では、前期比で販売物量が減少する産業機械事業と横ばいのアフターマーケット事業については利益率の維持、半導体不足解消により販売物量増が見込まれる自動車事業については、生産増への対応と上記重要課題の実行を両立し、営業損失を解消することが必須です。さらに自動車事業の収益力向上を目的に中長的な取り組みとして欧州、米州を中心とした組織と生産再編を進める予定です。2024年3月期は再編等の損失の一部を織込んだ結果、売上高8,100億円、営業利益300億円、特別損益△40億円、親会社株主に帰属する当期純利益110億円を見込んでおります。なお、配当につきましては年間10円の配当を予定しております。

株主還元の見通し

2. 利益分析(前期比)

2023年3月期通期〈実績〉vs 2024年3月期通期〈見通し〉

利益増加要因(317億円)の内訳

前期に引き続き最大の利益増加要因は売価レベル229億円です。規模等については、自動車比率増加による構成の悪化や在庫削減の影響等を保守的に見込んだ結果、52億円にとどまる見込みです。経費等については規模増等に伴う経費増を見込んでおりますが、前期に急騰した海上輸送費が低下に転じることから、トータルでは30億円の費用減を見込んでおります。これに為替の影響5億円を加え、317億円の利益増要因を見込んでおります。

利益減少要因(188億円)の内訳

比例費はエネルギー価格を含む諸資材の上昇213億円に対して、調達改革を含めて65億円の原価低減を織込み148億円の利益減少要因を見込んでいます。前期の原高370億円と比較すると、特に鋼材価格上昇ペースは落ち着いてきたものの、依然としてインフレコストは継続しています。
固定費については人件費で39億円の利益減少を見込んでいます。主に日本(14億円)や欧州(16億円)での物価上昇等に伴う人件費増がありますが、前期で人件費高騰と生産混乱により人件費が増加した米州は落ち着く見込みです。なお、人件費の増加39億円に運送費を除く経費等の増加19億円を加えた固定費の増加は58億円であり、物量での売上増401億円の15%(60億円)以内に抑えるという従来からの基準で設定しています。

3. 中期経営計画目標との比較

2024年3月期は財務体質強化を掲げた中期経営計画「DRIVE NTN 100」 Phase 2の最終年度となります。ウクライナ情勢や新型コロナウィルスの感染再拡大に伴うロックダウンを主因とした中国での経済減速、原材料・エネルギー価格等の諸資材の高騰、半導体供給不足の長期化による自動車生産の回復の遅れなど、中期経営計画策定時から事業環境は大きく変化しました。
このような厳しい状況下ですが、アフターマーケット事業、産業機械事業は中期経営計画の営業利益率目標は達成する見込みです。一方で自動車事業は、諸資材の高騰に伴う費用が先行、これを売価転嫁が追いかける展開となり、中期経営計画の営業利益率目標は未達となる見込みです。
販売規模が大きい自動車事業の未達に伴い、全社の営業利益率目標は未達となりますが、毎期の着実な業績の回復、遊休資産の売却、グループ内の財務マネジメントの徹底により財務体質の改善を着実に進めた結果、フリー・キャッシュフローや自己資本比率およびネットD/Eレシオは中期経営計画の目標を達成する見込みです。
ROIC5%、ROE8%等中期経営計画で掲げた目標の一部は、次年度以降にずれ込むことになりますが、引き続き企業価値創出に向けた経営にまい進する所存です。

「DRIVE NTN 100」Phase 2 最終年度と2024年3月期業績見通しとの比較

  2021年3月期
業績実績
DRIVE NTN 100
Phase2 ①
2023年3月期
実績
2024年3月期
業績見通し ②

② - ①
売上高 5,628億円 7,000億円以上 7,740億円 8,100億円 +1,100億円
営業利益 △31億円 420億円以上 171億円 300億円 △120億円
営業利益率 △0.6% 6%以上 2.2% 3.7% △2.3pt
(アフターマーケット事業) 9.7% 12.0% 16.6% 16.9% +4.9pt
(産業機械事業) 0.3% 4.0% 5.2% 5.6% +1.6pt
(自動車事業) △3.4% 4.7% △2.5% 0.0% △4.7pt
フリー・キャッシュフロー 185億円 270億円以上 204億円 290億円 +20億円
棚卸資産回転率 3.2回 4.1回 3.2回 3.7回 △0.4回
自己資本比率 20.4% 20%以上 25.4% 25.8% +5.8pt
ネットD/Eレシオ 1.6 1.5以下 1.2 1.1 △0.4
ROIC △0.4% 5%以上 2.0% 3.6% △1.4pt
ROE △7.1% 8%以上 5.0% 5.0% △3.0pt

次期中期経営計画に向けて

2024年3月期で現中期経営計画は終了し、2024年4月から3年間の次期中期経営計画が始まります。それに先立ち、本年4月に本社部門の戦略機能を高めることを目的とした組織改革を実施いたしました。本社部門として、財務、ブランド、事業ポートフォリオ、生産・技術等の各種戦略を策定・推進する機能を高めることにより、グループ全体の事業活動に貢献できる組織へと変革します。現在、本社部門と事業部門が対話を重ね、次期中期経営計画を練り上げておりますが、次期中期経営計画では、現中期経営計画で掲げた損益分岐点売上高引き下げ(商品/事業ポートフォリオ改革、調達改革、固定費コントロール)、キャッシュ・フロー拡大(生産・物流改革)等の施策は継続し、現中期経営計画で未達となる見込みのROIC5%、ROE8%等の目標を早い時期に達成するとともに、生産再編等の構造改革も着実に進め、財務体質のさらなる強化を目指します。
さらに、カーボンニュートラル推進や人材への投資(人的資本経営)等の非財務指標の目標も設定・開示する予定です。財務体質の強化ならびに非財務指標の向上を着実に進めることにより企業価値を向上させるとともに、株式市場との対話を通じご評価をいただくことで、PBR>1を目指してまいります。ステークホルダーの皆さまには、引き続きご支援、ご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。