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CEOメッセージ

代表執行役執行役社長 鵜飼 英一

当社グループは、省エネルギー技術とサービスを通じて、産業の発展のみならず、地球環境に貢献することを使命としています。この揺るぎない信念のもと、私たちは2035年度のあるべき姿を定め、その実現に向けた第一歩として中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalを2024年度より始動しました。「Final」に込めたのは、NTN再生の完遂を果たす覚悟です。私たちは、止めない技術、長寿命商品、エネルギーロスの低減を追求し、次世代を担う人たちに安全・安心で美しい地球を引き継ぐという強い意志のもと、技術の進化とサステナブル社会の構築に貢献し続けます。本メッセージでは、Final初年度の成果と課題を振り返るとともに、今後の事業戦略の全体像をステークホルダーの皆さまにお伝えします。

NTNのパーパスに基づく「DRIVE NTN100」Final

当社グループの原点には、創業当初から受け継がれてきた「開拓者精神」と「共存共栄精神」があります。私たちは常に挑戦を恐れず、社会とともに歩む姿勢を貫いてきました。企業理念の「新しい技術の創造と新商品の開発を通じて国際社会に貢献する」においてもその精神を踏襲し、さらに時代の変化に柔軟に対応しながらパーパスである「なめらかな社会」の実現を通して、持続可能な未来の創出に貢献します。
中長期的な成長を見据え、当社グループは2024年度から中期経営計画「DRIVE NTN100」Final をスタートしました。この計画は、2035年に実現したい姿を描いた上で、そこに至る道筋を逆算して構築したものです。私たちが目指すのは「経済的価値と環境・社会的価値をステークホルダーの皆さまとともに向上させることで企業価値を高め、ステークホルダーの皆さまから信頼・必要とされる企業」です。経済的価値については、株主資本コストを常に上回るROEの達成と向上を追求します。環境・社会的価値の面は、カーボンニュートラルの達成と豊かな人づくりの実現を掲げています。
これらを実現するため、私たちはバックキャストとフォアキャストの両視点から施策を立案・実行しています。具体的には、2024年度から3年間で取り組むべき重点施策を明確化するとともに、外部環境の変化を捉えた柔軟な対応を進めています。
組織体制は、施策の実行力を高めるため、従来の市場軸に基づくアフターマーケット、産業機械、自動車の3事業本部体制から、軸受事業本部とCVJアクスル事業本部の2本部体制へと変革しました。これにより、事業の特性に応じた迅速かつ的確な意思決定が可能となり、構造改革の加速につながっています。特に、自動車向け軸受の利益率改善という喫緊の課題に対しては、お客さまと真摯な対話を重ねながら、着実に成果を上げつつあります。同時に、安定的に利益率の高いアフターマーケットの売上拡大にも注力し、収益基盤の強化を図っています。

DRIVE NTN100

「DRIVE NTN100」Final初年度の成果と課題

新たな組織体制でスタートした「DRIVE NTN100」Finalは、初年度において前期比で減収減益、公表比で増収増益となりました。自動車生産および産業機械市場の需要低迷という逆風の中、円安の影響が下支えとなり、売上高は公表比で増加。営業利益も規模縮小の影響を受けましたが、円安の影響に加えて、売価改善と費用削減を進めた結果、公表比で増益を実現しました。棚卸資産についても前期末比で削減し、ほぼ公表通りとなっています。
当社グループの売上構成は、自動車関連が65%を占め、残りを産業機械とアフターマーケットが担っています。特に、自動車関連売上高の80%、すなわち全体の約半分がCVJとアクスルによるものです。CVJアクスル、軸受他は前期比で減収減益となりましたが、アフターマーケットの売上構成比率は17%まで上昇し、前期対比で着実に成長しています。
CVJアクスルについては、電動化の進展に伴う新たな市場ニーズに対応し、筋肉質な事業基盤の構築に注力してきました。OEM向けは、お客さまからの要望に応えながら利益を確保する体制を整えています。自動車関連はEV化の拡大に伴い、電動ブレーキ用ボールねじなどの新たなニーズが生まれています。材料と部品の信頼性向上と設計強度を見直すことでダウンサイズ化を実現し、将来的な需要増に対応します。電動機械ブレーキ(EMB)用ボールねじのトップサプライヤーを目指し、生産・販売・技術チームが一体となって活動に取り組んでいます。
軸受については、自動車向けの利益率を改善するため、お客さまと対話を重ねてきました。原価低減の取り組みに加えて、材料費の高騰などエビデンスに基づき丁寧に説明することで、多くのお客さまから価格改定をご理解いただきました。また、OEMのお客さまへのBCP対応において課題となっていたサプライチェーンの強靭化については、インドをはじめとする新規サプライヤー開拓を継続しています。世界情勢が大きく変化する中で、お客さまへ安定的でコスト競争力のある商品を供給し続ける仕組みを維持・強化するためにも、複数の調達先を提示できる体制整備に努めます。
事業構造の変革に向けて、利益率が安定的に高いアフターマーケットの売上高を拡大することで、創業以来100年以上続いてきたOEMオリエンテッドの企業体質から脱却を目指し、外部環境に左右されにくい企業体質へ転換を進めます。

中長期的な成長に向けて構造改革に集中

2026年度までの3年間は、構造改革に集中する期間と位置づけ、ROE8%達成を目標に掲げ、事業活動を通じた企業価値の向上に取り組んでいます。具体的には売上高のポートフォリオを変換し、利益率の高いアフターマーケットの構成を戦略的に高めます。現状の売上高が2035年度にかけて大きく変動しない前提でも、アフターマーケットの構成比を目標通り40%に高めると過去の実績から安定的な営業利益が見込めます。さらに、構成比60%を占めるOEMにおいては、不採算案件の見直しにより利益を積み増し、ROE8%の達成に向けた構造改革の展望が開けます。なお、ポートフォリオ変革を進める中で、OEMの重要性は揺るぎません。OEMは、当社グループの技術革新の原動力であり、一定の発注量のもと当社の生産技術を磨き続けるかけがえのないパートナーです。
アフターマーケットの売上高を目標通り拡大するためには、前期対比6%の成長を維持する必要があります。その実現に向けて、次の6つのテーマに取り組みます。第1が汎用品の在庫即納システム「FIRST」の進化です。既存の販売会社向け品番を拡充することで、即納体制を強化します。第2がリードタイムの改善と生産能力の増強です。生産頻度が低い高利益商品の仕掛在庫を適切に揃えるほか、国内工場に新設したアフターマーケット向け生産ラインを強化します。第3が代理店セールスエンジニアの育成と活用です。教育訓練や技術講習会の支援に加え、お客さまの現場に同行することで、迅速な対応と課題解決につながるエンジニアリング・ソリューションの充実を図ります。第4が外部調達を含めたControlled by NTN品の調達・販売拡大です。既に小型ボールベアリングは海外協力会社へ移管を完了しており、SCM戦略本部に完成品調達部を新設したことで供給力向上を図ります。第5が「止めない技術・サービス」として設備のダウンタイムを未然に防ぐ技術ソリューションの提供です。CMS(Condition Monitoring System:コンディション・モニタリング・システム:状態監視システム)により軸受のトラブルなどによるライン停止を未然に防止し、お客さまの損失を最小限に抑えます。また、高付加価値な技術ソリューションを提供することでMRO(Maintenance・Repair・Overhaul:保守・修理・オーバーホール)向け販売を拡大します。そして第6となるのがグローバル販売網の拡大です。地域や国ごとにターゲット業種を設定し、最適な代理店の開拓と販路拡大を推進します。新たにベトナムに支店を設立したほか、需要の大きい米州で新規代理店の開拓など積極的な展開を進めています。

サステナブル社会構築に向けた新事業の展開

サステナブル社会構築に向けて、軸受ライフサイクルマネジメントに取り組んでいます。これは軸受の選定から納入、使用、監視、分析、交換から運用保守に至るまで、設備の安定稼働を支えるための支援サービスです。例えば「しゃべる軸受」は、センサーを軸受に内蔵して状態を監視し、軸受の振動、温度、回転数から設備の状態を「見える化」することで予期せぬ停止を未然に防ぎます。現在はプロモーション期間として、発電所など24時間フル稼働が求められる現場で、モーターの作動状況を常時モニタリングするサービスを無償提供しています。これにより収集・解析されたデータは、将来的に補修品の事前準備や予防保全につながり、重要な社会インフラやお客さまのラインの安定稼働に貢献します。
風力発電においては、CMSを活用した24時間監視体制を国内で多数展開しており、AIによる解析も導入済みです。お客さまとデータを共有し、異常発生時は迅速に対応することでサービス料をいただく新たなビジネスモデルを構築しています。今後、「しゃべる軸受」を含むデータが一定規模に達した際は、軸受のサブスクリプション型サービスを拡大してまいります。
次世代自動車のニーズに応えるべく開発したのが「HA-C軸受」です。特殊熱処理技術により業界最高水準の高負荷容量化を実現し、小型・軽量化、高温寸法安定性や耐異物性、耐摩耗性の向上を兼ね備えたHA-C軸受は、EV・HEV用e-Axleなど自動車向けアプリケーションに本格的に提案を開始しています。これらの長寿命商品と止めない技術の組み合わせにより、当社はサステナブル社会構築に貢献します。お客さまの設備を止めないことは、カーボンニュートラルにつながると同時に、軸受を適切なタイミングで交換することが、アフターマーケット・ビジネスの拡大にもつながります。
さらに、人口減少や環境問題といった社会課題への対応として、省人化、高効率化につながる技術開発にも注力しています。省人化の好例が手首関節モジュール「i-WRIST(ロボット)」による高速フレキシブル外観検査です。自動車業界で「ギガキャスト」、すなわち主要部品を大型ダイカストマシンで一体成形する鋳造技術へ移行が進む中、ギガキャストは大きな鋳造製品の高速チェックが必要となるため、自動車メーカーなどからi-WRISTを使ったロボットシステムに対する引き合いが増加しています。
高効率化の一例として、「卓上型微細塗布装置」が挙げられます。2000年代に開発した液晶ディスプレイの欠陥修正用の大型液晶リペア装置を小型化し、ライフサイエンス分野に転用しました。高粘度・極少量の液剤を高速かつ高精度に塗布できるこの装置は、新たなバイオプリンティング方式として、生きた細胞や生体材料を積層して組織や臓器を作製する技術に適用され、iPS細胞による創薬実験などの研究活動に採用されています。今後も当社グループがこれまでに蓄積してきた技術のイノベーティブな活用に取り組みます。

代表執行役執行役社長 鵜飼 英一

事業環境の急変への対応

事業環境の変化を象徴するのが、米国の通商政策です。政策の不確実性が高く、2025年度の業績予想にはその影響を織り込みませんでしたが、判明している関税条件を前提に試算した結果、営業利益に対して135億円の押し下げ要因となります。関税影響によるコスト増は、適切に売価へ転嫁するとともに、一部サプライチェーンの見直しにも着手しています。現時点で米国における現地生産拡大は、コスト面で優位性が見込めないと判断しており、柔軟な対応を継続しています。
当社グループは、日・欧・米・中とインド・アセアンの5極に対応するグローバルネットワークを構築しています。中でも著しい成長を続けるインド市場に注力しており、自動車メーカーの発展にあわせて、工場の拡張や人材育成を進め、需要に応える体制を整えます。次なる成長領域としてアフリカ市場の開拓を視野に入れ、ドバイの販売拠点を活用し、商社とも連携しながら販売拡大を進めます。
サプライチェーン改革も重要課題であり、グローバル最適化に取り組んでいます。効率的かつ競争力のあるサプライチェーン構築に向けて、例えば中国で前工程を担当し、欧州で完成品に仕上げる事例などが立ち上がっています。改革を進める上で、影響が避けて通れない米国の関税問題の動向を注意しながら迅速な意思決定のもと体制を整備します。
近年、急速に注目を集めている生成AIについては、販売・管理領域においては予測、検索、資料作成の効率化に活用しています。また研究・開発領域では、AI解析システムによる開発期間の短縮に取り組み、MBD(モデルベース開発)によりハブベアリング設計の計算工数を削減しました。さらに生産・調達領域においては、スマートファクトリーの拡張によるライン作業の自動化や省人化を推進し、実際に和歌山製作所において各種データの見える化による生産活動の変革に結びつけています。

次の100年に向けたESG経営の進化

当社グループは、企業理念の実践を通じて「なめらかな社会」の実現を目指します。そのためにサステナビリティ活動を通じて、人類が安全・安心に生活できる美しい地球を次世代へ引き継ぎます。
ものづくり企業としての責任を果たすべく、環境対応は事業活動におけるカーボンニュートラルの達成と、商品・サービスによる環境貢献を目指します。2035年度にスコープ1とスコープ2におけるカーボンニュートラル達成、2050年度にサプライチェーン全体を対象とするスコープ3でカーボンニュートラル達成を目標に取り組んでいます。
社会面については、「企業は人なり」の信念のもと、人材育成を経営の根幹に据えています。従業員の多様性を尊重した働きがいのある環境を整え、社会貢献として地域活動にも力を入れています。経営陣が現場、現地に足を運び、タウンホールミーティングを通じて職場の皆さんから寄せられる困りごとや疑問などにしっかり耳を傾け、対話を重ねることで、組織全体の信頼と連携を深めています。
ガバナンスの高度化にも継続的に取り組んでいます。2019年に指名委員会等設置会社へ移行し、2022年6月以降は取締役会の議長に女性の社外取締役が就任しています。また、各種委員会による実効性の強化や監査体制の充実などにより、透明性と公正性の向上を図っています。

利益創出の体制を確立し、さらなる発展へ

当社グループは、株主資本コストを上回るROE達成に向けてアフターマーケットの売上高を拡大し、営業利益を確実かつ安定的に高めます。加えて、棚卸資産の削減と借入金の絞り込みにも注力し、財務体質を強化しています。2026年度にROE8%達成を目標に掲げ、純利益の増加と総資産の圧縮を両立させることで棚卸資産回転率4.5回転の実現を目指します。
アフターマーケットを伸ばすためには適切なグローバル即納在庫が不可欠です。これに伴い棚卸資産は増加傾向となりますが、仕掛在庫の適正管理を徹底します。また、お客さまとの接点である代理店と関係性を深化させることで、棚卸資産回転率を高めます。
構造改革を断行するためROEについては「DRIVE NTN100」Finalの初期2年間で一時的に低下する見込みですが、最終年度には8%、次期中期経営計画では早期に10%の達成を目指します。これらの取り組みを通じて、株主や投資家の皆さまの期待に応えるとともに、ステークホルダーの皆さまとの信頼関係を一層強固にします。具体的には、IR活動を充実させており、説明会の映像とスクリプトを日英開示、事業説明会や工場見学会の開催、経営幹部や社外取締役との直接対話の機会を設けるなど対話を促進しています。
2035年度のあるべき姿の実現に向けて、職場の皆さんに「自らが経営者の視点を持ち、何ごとも自分事として捉えて、自らの成長を目指してほしい」と伝えています。仕事とは自らにとっての舞台であり、各自がそれぞれの役をポジティブに演じきれば舞台が活性化され、ひいてはステークホルダーの皆さまから評価していただける——この考えのもと、業績向上を達成して企業価値を高め、市場からの信頼を回復させ、パーパスに基づく中長期的に安定した発展を目指します。

代表執行役執行役社長 鵜飼 英一