CEOメッセージ
当社グループは、「なめらかな社会」の実現を目指し、ステークホルダーの皆さまから信頼され、社会に必要とされる企業であり続けるため、経済的価値と環境・社会的価値の両面から持続的な企業価値の向上に取り組んでいます。中でも、資本コストを上回る持続的な利益の創出に向けた事業ポートフォリオの変革は、当社の未来を左右する極めて重要な経営課題として、強い覚悟のもと、構造改革を推進しています。こうした中、2024年度から進めてきた中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalが最終年度を迎えました。これまでの取り組みを振り返るとともに、目標達成に向けた現在地を整理し、次期中期経営計画の方向性および2035年度のビジョンを見据えた成長戦略についてお伝えします。
「DRIVE NTN100」Final 2年目の振り返り
当社は1918年の創業以来、「開拓者精神」と「共存共栄精神」を礎に、常に新たな技術と商品の開発に挑戦してきました。主力商品であるベアリングは、機械のあらゆる回転部をなめらかにし、社会の動きを支える基盤となります。自動車や航空機、鉄道車両をはじめとする多様な産業機械分野において、その性能を通じて社会の発展に貢献してきました。
こうした事業基盤をさらに強固なものとし、事業ポートフォリオ変革を加速させるため、中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalの始動に合わせて、組織体制を軸受他事業とCVJアクスル事業の2本部体制へと再編しました。軸受他事業については、OEMとアフターマーケットを一体運営する体制を構築し、アフターマーケット・ビジネス拡大に向けた供給力の強化とソリューション提案力の向上を推進しています。一方、CVJアクスル事業については、収益力の拡大に加え、電動化をはじめとする新たな市場ニーズへの対応力を強化しています。
このような体制のもと、2025年度は、アフターマーケットおよび産業機械向け需要の拡大を背景に、売上高は前年を上回る結果となりました。また、営業利益についても、調達・生産・販売・設計の各領域で進めてきた改革の成果が顕在化し始め、増益を達成しています。さらに棚卸資産についても、生産改革の進展が見られ、為替の影響などを除いた水準で公表値を達成するなど着実な進捗が見られました。
「DRIVE NTN100」Final 最終年度の取り組み
当社を取り巻く環境は、気候変動や地政学リスクの高まりによるサプライチェーンへの影響、AIをはじめとするデジタル技術の進化など、常に大きく変化しています。こうした認識のもと、2026年度は「DRIVE NTN100」Finalの最終年度であるとともに、次期中期経営計画以降の成長を支える基盤づくりの年と位置付け、メーカーとしてさらなる競争力の強化に取り組んでまいります。
そのひとつが「設計開発」と「調達(買う)、生産(造る)、販売(売る)」の連携です。まず設計開発は、お客さまの要望に応えるだけでなく、将来のニーズを先取りした提案型の開発を意識してまいります。また、製品設計そのものを抜本的に見直し、部品構成の簡素化や標準化を進めることで、品質向上と原価低減の両立を目指します。
生産分野は、部分最適から全体最適へという基本方針のもと、OEM領域におけるサプライチェーン全体の整流化とリードタイム短縮を推進し、あわせて生産平準化や在庫削減による効率的な供給体制を構築します。
調達においては、グローバル一括交渉の拡大や新規サプライヤーの開拓、デュアルソーシングの推進などによる原価低減を見込むとともに、サプライヤーリスク管理の高度化やサプライヤーポータルの導入による業務効率化、AIを活用した価格分析などを進めており、コスト競争力の強化と安定調達およびレジリエンス向上を図ります。
物流は主要拠点における積載率の向上などによる輸送便数の削減を進め、外部倉庫への入荷便を大幅に削減するほか、拠点・倉庫の統廃合や輸配送の最適化、仕入先物流の見直しなどによりコスト削減を推進します。さらに販売は、お客さまとの関係を強化するとともに、不採算領域のコスト構造を見直すことで持続的な収益力向上につなげます。
こうした改革を推進する上で、私が従業員に繰り返し伝えているのが「Go to GEMBA(現場)」という考え方です。お客さまあってこそのビジネスである以上、お客さまが何を求めているのかを知るために、現場へ足を運ぶことが欠かせません。現場とはビジネスの最前線であり、人がいて、新たな付加価値が生まれるすべての場所を指し、答えの多くは現場にあります。現場にいる人たちと対話を通じて情報を収集し、ともに課題解決に取り組むことで本質的なテーマが見えてきます。また、その内容を組織へフィードバックしていくことが、一体感や主体的な行動を生み出す原動力になると考えています。
こうした取り組みを進める上で、今期は「時間を価値に変える」という考え方を最重要テーマに掲げています。全部門が各領域においてリードタイムの短縮を追求し、スピードそのものを競争力へと転換していく考えです。この方針は全従業員が共有すべき指針として、日々の業務の中で実践します。
ポートフォリオの変革を支える構造改革
当社グループは、2035年度にアフターマーケット向け売上比率40%、OEM向け売上比率60%というポートフォリオ変革を目指しています。事業構造の変革に向けた基盤づくりとして、構造改革においては3年間で総額350億円の施策を計画通りに実行します。
2025年度は、日本の超大形軸受、米州のCVJ、欧州におけるアクスル軸受、中国における軸受関連拠点の生産再編など、グローバル改革を推進しました。あわせて、生産性向上やコスト構造の見直しにも取り組み、収益体質の強化を進めています。こうした施策の効果は着実に発現しており、2026年度には100億円を超える改善効果を見込んでいます。
アフターマーケット・ビジネスを拡大していく上で重要な鍵のひとつは即納力です。即納力とは、お客さまが必要とするタイミングで確実に商品を供給できる体制を指します。過去、私たちはOEMを優先する過程でアフターマーケットのお客さまを失う結果を招いてきた経緯があります。こうした反省を踏まえ、組織体制そのものを見直し、軸受他事業においてOEMとアフターマーケットを一体でマネジメントすることで、両市場に対して説明責任を果たしながら、即納体制の強化を進めています。
もうひとつ、アフターマーケットの競争力を支える柱がエンジニアリング体制です。商品の品質や長寿命化に加え、お客さまの困りごとに対して迅速に解決策を提供できる体制を備えることで、お客さまからの信頼は一層強固なものになります。その結果として、「この会社に相談すれば安心して任せられる」というブランド価値が生まれ、交換需要の獲得につながります。アフターマーケット・ビジネスは最終的には人と人との信頼関係の上に成り立つものです。当社と他社が同じ性能と品質の商品を提供したときに当社を選んでいただける、それがブランドです。販売ネットワークや代理店との連携を強化し、現場に寄り添うことで、問題発生時にも迅速に対応できる体制を整備します。
なお、アフターマーケット向けの販売拡大は、OEMビジネスの重要性を損なうものではありません。OEMビジネスは、お客さまの高度な要求に応える商品開発力や量産技術、品質・コスト・納期(QCD)への対応力を磨く重要な事業基盤です。こうした基盤が、アフターマーケット・ビジネスの競争力向上にもつながっています。当社は、OEMとアフターマーケットそれぞれの強みを活かすことで事業ポートフォリオの変革を進め、市場環境が変化する中にあっても持続的に利益を創出できる事業基盤を構築してまいります。
サステナブルな社会の実現に向けて
2035年度のあるべき姿として掲げる企業価値の向上においては、経済的価値に加え、環境・社会的価値の創出も重要な柱と位置付けています。サステナブルな社会の実現は当社グループのパーパスそのものであり、メーカーにとってのサステナブルは、持続可能な商品やサービスを極め、これらを社会に提供していくことにほかなりません。その実現に向けて当社グループは、「止めない技術」と「長寿命化」を中核に据えています。前者の代表例として「風力発電装置用状態監視システム(CMS)」や「しゃべる軸受」などがあり、後者については「グリース潤滑軸受向け潤滑油給油ユニット」や「HA-C軸受」などが挙げられます。
私たちが目指しているのは単にハードウェアを売り切ることではなく、商品が寿命を迎える予兆を監視し、お客さまの設備やプラントをより長く、より安定的に稼働させることです。そのために、これまで蓄積してきた膨大なデータがあります。それらを分析し、適切なメンテナンス時期を提案することで、突発的な停止を防ぎ、計画的な運用を可能にします。また、100年以上にわたって培ってきた技術や知見をお客さまのニーズに応じて組み合わせ、新たなソリューションとすることも当社の強みです。例えば、手首関節モジュール「i-WRIST」などは、その技術融合から生まれたイノベーションの一例であり、多様な課題に対して最適な解決策を提供できる当社の価値を示しています。
また、こうしたデータ活用の可能性をさらに広げる技術として、AIにも大きな期待を寄せています。AIの進化は極めて速く、使いこなせる企業とそうでない企業との差は今後ますます広がっていくでしょう。一例として、当社では和歌山製作所においてスマートファクトリーの進化に取り組んでいます。少子高齢化による労働力不足が進む中、製造現場における自動化・省人化も重要なテーマであり、将来的にはヒューマノイドの活用も視野に入れています。また、管理業務においてもAIエージェントの活用を進めており、人が担うべき判断や創造的業務と、AIや機械が担う業務を適切に分担して生産性の向上に努めてまいります。
カーボンニュートラルの取り組みについては、まず工場におけるエアーコンプレッサーの省エネとして、エア漏れ対策や圧力の適正化に取り組みました。加えて、再生可能エネルギー電力を外部から長期契約で調達するPPAの導入など、電力の脱炭素化に向けた取り組みも進めてきました。現在は設備投資も伴いながら、組織全体で取り組む第2フェーズへと移行しています。今後はより高い目標を達成するために、各拠点、さらには全社的な活動として深化させていくことが重要であると考えています。
人的資本の充実と組織力の強化に向けて
当社グループは「企業は人なり」の考えのもと、従業員一人ひとりの成長が企業の成長につながると考えています。2035年度に向けた変革においても、世界中の2万1千名の従業員一人ひとりの小さな前進の積み重ねが、大きな原動力になっていくでしょう。そのため、中期経営計画と連動した人的資本経営を推進し、仕事基準の人材マネジメント、自律型人材の育成、マインド変革などに取り組み、制度整備から実践・定着のフェーズへと移行しつつあります。
事業戦略との連動においては、多様な挑戦機会の創出や経営人材の育成を通じて、戦略的な人材配置を進めています。AI・DXなど成長領域を担う専門人材の育成に取り組むとともに、社内公募制度などを通じて従業員の自律的なキャリア形成を支援しています。エンゲージメントは全体的に改善傾向にありますが、さらなる成長に向けて、経営と現場の相互理解を一層深めていくことが重要であると認識しています。人的資本経営の本質は、従業員一人ひとりに成長機会を提供することです。人の成長にゴールはありません。働きやすい環境づくりはもちろん、仕事を通じた成長を支援し、対話を重ねながら組織力の向上へとつなげてまいります。
また、人的資本と同様に、持続的な企業価値向上を支える基盤として、ガバナンスは極めて重要です。当社は2019年より指名委員会等設置会社へ移行し、迅速な意思決定と業務執行体制の強化、経営の監督機能の向上に取り組んできました。現在は、社外取締役比率の過半数化を継続的に検討するなど、さらなるガバナンス強化を図っています。
次世代により良い未来を渡すために
次期中期経営計画については、現在、複数のプロジェクトチームを編成し、具体的な施策を立案中です。方針として、まず、ROE8%の達成を確実なものとし、その先にROE10%を目指せる収益体質への変革を進めます。これまで展開してきた各種改革は、企業価値の回復に力を入れてきましたが、次の中期経営計画ではその成果を確実に利益として定着させ、稼ぐ力を安定的に生み出せる企業へと成長していくことが不可欠です。ROEに加えROICの向上にも取り組み、資本効率の改善を目指します。
最後になりますが、当社は2026年5月、日本精工株式会社と共同持株会社設立による経営統合に向け協議・検討を進めていくことを決議し、基本合意に至りました。これまで、個社の構造改革を通じて、5年10年単位の未来を見据えてきましたが、変化の激しい現代において、より良い未来を次世代に渡すために、経営のあり方を幅広い視野で考えることも大きな責務と考えています。
当社は今後も「なめらかな社会」の実現に向けて変革への歩みを止めることなく企業価値の向上に努めてまいります。ステークホルダーの皆さまには引き続きご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。