HOME > サステナビリティ > 第三者意見

第三者意見

「NTNレポート2023」第三者意見書

写真:関西学院大学商学部副学部長・教授 阪 智香 様

関西学院大学商学部教授
阪 智香 様

略 歴:
関西学院大学商学部専任講師、助(准)教授を経て、2008年より教授。商学博士。現在、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)委員、金融庁企業会計審議会委員、日本学術会議連携会員、大阪府環境審議会委員、大阪市環境審議会委員、日本経済会計学会常務理事など。日本会計研究学会学会賞など受賞。著書に『環境会計論』(東京経済情報出版) など。

NTNレポート2023の特筆すべき点

2023年6月に、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)から最初のサステナビリティ基準となるIFRS S1号とIFRS S2号が公表されました。これを踏まえ、「NTNレポート2023」には次の3つの特筆すべき点が挙げられます。
1つ目は、S1で挙げられている有用な情報の全般的特徴に関して、連結財務諸表と同一範囲が対象とされていること、重要性のあるサステナビリティ関連のリスクと機会の情報がカバーされていること(P.21,22)、比較情報が掲載されていることなど、概ねS1の全般的特徴に沿った情報開示がなされています。あとは、サステナビリティ情報と財務諸表情報との結びつきについて、価値創造ストーリーなどに反映されるようになれば、有用性もより高まると考えます。
2つ目は、S1において考慮することが要求されているSASBスタンダートの開示基準に基づく産業別会計指標の一覧表が、「NTNレポート2021」から継続的に開示されてきたことです。「資源の変換セクター 産業機械・生産財」と「運輸セクター 自動車部品」の両方における重要度が高いトピックにすでに対応を始めていることは、将来の財務リスクの低減と機会の獲得に確実につながるものと思います。
3つ目は、S2のテーマである「気候変動への対応」が、社会課題解決への貢献として、マテリアリティ13項目の1つ目に改めて位置づけられたことです。グループ経営本部カーボンニュートラル戦略推進部が設けられ、実現のためのガバナンスも強化されました。スコープ1,2の2035年に向けた「カーボンニュートラル実現イメージ」と重点施策(P.53)も追加されるなど、長期的対応への道筋が固められたことは、今後の取り組みのレベルアップにつながるものと期待します。
なお、2023年5月にIFRS(国際会計基準)財団が公表した今後の新たなプロジェクト案として、生物多様性、人的資本、人権が挙げられています。これらのテーマに関しても、「NTNレポート2023」ではすでに扱われています。特に、人的資本の開示では「人材戦略の5つの柱」(P.62)が明記されました。変革を担う次世代の人材育成への取り組みは、トップメッセージや価値創造ストーリーで述べられているさまざまな変革の実現にも寄与するものと期待されます。

サステナビリティ開示が拓く中長期的な企業価値向上

ISSBのサステナビリティ基準が対象とするサステナビリティ関連財務情報は、財務情報とサステナビリティ情報を連結させ、真の統合思考や統合報告の実現に大いに役立つものです。「NTNレポート2023」で新たに言及された「事業ポートフォリオ・商品ポートフォリオの再構築」(P.30)や、リスクと機会、その対応策(P.56)などが、財務情報と関連づけられれば、グローバル投資家への説得力もより高まるものと思います。
NTNのレポートから読み取れるサステナビリティへの着実な対応は、トップメッセージにある「事業構造の変革」のベクトルと、パーパスから導かれる使命「事業における環境負荷を可能な限り低減させながら、商品やサービスの提供を通じてその解決に貢献すること」のベクトルの方向性を合わせることを可能にすることでしょう。組織メンバーにとっても、さまざまな部署に属する一人ひとりが同じ方向に向かって中長期的な価値創造の途上にいることがこのレポートを通して確信できることは、その実現に向けての大きな力になるものと期待します。

第三者意見を受けて

写真:執行役 ESG推進部担当 木下 俊平

執行役
ESG推進部担当
木下 俊平

阪先生には、貴重なご意見を賜り厚く御礼申し上げます。
当社は、企業理念の実践を通じて、世界を取り巻く社会的課題の解決に貢献し、人々が安心して豊かに暮らせる「なめらかな社会」の実現を目指しています。当社が優先的に取り組むべき重要課題として特定した13項目のマテリアリティのうち、特にカーボンニュートラルについて、設定した目標に向けての施策の具体化と新組織の設置などをご評価いただき、今までの取り組みに確信を持つことができました。
お示しいただきました投資家の皆さまへの説得力をより高めるという視点からも、気候変動への取り組みのさらなるレベルアップや、サステナビリティ情報と財務情報の結びつきの強化、変革を担う次世代の人材育成への取り組みなどの情報開示を進めつつ、施策を具体的に推進してまいります。
今回いただいた貴重なご意見を真摯に受けとめ、中長期にわたる企業価値の向上に努めてまいります。