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サステナビリティ担当役員メッセージ

執行役 菊田 剛

「なめらかな社会」とは暮らしの中で生じる摩擦や葛藤を減らすこと

当社は1962年にドイツ、翌年にはアメリカに販売会社を設立し、1971年には両国に製造拠点を構えました。他社に先駆けて海外展開を図ったこともあり、現在では売上高の70% 強を海外市場が占めています。このような背景から、当社では、昔から多くの従業員が海外赴任を経験されており、先輩・上司の多くも海外勤務を経験され、海外が身近な職場環境におりました。そして私自身も29歳から5年間、比較的若いうちにアメリカ・シカゴの販売会社で勤務させてもらいました。そこでは、アメリカ社会の中で外国人(マイノリティー)の立場に立ち、「日本の常識は非常識」という現実を知り、「違うことは当たり前、受け入れなければ生きていけない」と学びました。物事をさまざまな立場や角度から見つめることをはじめ、仕事や日々の生活、旅行などから有形無形の多くのことを学ぶことができ、人生観が大きく変わりました。特に印象的だったのは働き方の違いで、(アメリカだけではないと思いますが)夕方5時以降の駐車場に残っているのは日本人の車だけ、という光景に文化の違いを強く実感しました。
このような経験をした私が考える「なめらかな社会」とは、日本だけでなく世界全体を視野に入れたものです。当社は世界中で事業を行っており、多種多様な方々が勤務されています。歴史や文化が異なる国々の多種多様が当たり前の日常の中でも、物事の障害や摩擦、人々の心の中の「もやもや」や「引っかかり」をより少ない状態にすること、それが私が考える「なめらかな社会」の姿です。当社でいえば、多種多様な従業員の心をひとつにするためには、企業理念やNTNスピリットのようなマインドを共有することが大切だと思います。

全社で共有伝達されるサステナビリティ活動

従来、お客さまの取引先選定の判断基準は、「価格」「納期」「品質」「技術対応」といった要素が中心でした。しかし近年では、私たちサプライヤー側のサステナビリティへの取り組みも、重要な評価項目として位置づけられるようになっています。特に、気候変動や人権への対応などに関する第三者機関による評価指標の重要性が高まってきており、経営層の間でも、こうした動向は広く共有されるようになっています。
これまではサステナビリティ活動に関する話題は、サステナビリティ部門と関係部門の間だけで取り扱われていましたが、現在ではすべての執行役の間で共有されることが増えています。議論された内容は執行役を通じて担当地域や担当部署に展開され、全社的な意思決定に反映されています。

中期経営計画におけるESG経営の重要施策

2024年度からスタートした中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalにおいて、「変革を支える戦略」のひとつに「ESG 経営の進化」を掲げています。

E:環境

当社は、2035年度のカーボンニュートラル達成に向けて、2018年度比で2026年度にCO2排出量30%超削減を目標に掲げています。カーボンニュートラル推進委員会で各拠点の状況を定期的にフォローしており、現在のところ進捗は順調です。
一方、財務面でも、カーボンニュートラルと結びつく取り組みを行っています。それは「サステナビリティ・リンク・ローン」と呼ばれる、カーボンニュートラル目標の達成状況に応じて金利の優遇が受けられる資金調達で、2023年から導入し、既にこのスキームを使って、12件、総額270億円の借入を行い、経済的な価値の創出にもつながっています。
さらに「より軽く、より耐久性に優れた商品」へのニーズが一層強まる中、自動車、航空機、鉄道車両、建設機械、風力発電といった多様な分野において、エネルギーロスを極限まで低減する商品の開発・提供に注力しています。

S:社会

当社を含む企業が直面している課題のひとつに離職者の増加があります。これまでは終身雇用が当たり前でしたが、転職が一般的となった今、大切な人財を維持するためには従業員のエンゲージメントが大切です。大小さまざまな組織のトップが自らの考えや思いを発信し、従業員と真摯に対話することが重要だと考えています。私自身も部門長を務めていた頃は、半期に一度、会社の方針と、それに基づく自部門の目標や戦略を部員に直接語り共有する場を設け、職場の一体感を醸成することに努めていました。
採用面では、入社後の現場実習を経てから配属先が決まるという従来の仕組みが、その後の定着率に影響を与えていることから、2024年から一部で初期配属職種確約型採用を導入しました。入社前から自身のキャリアイメージを描けるようにすることで、より高いモチベーションを持って働き始めることができると考えています。
現在、多くの職場では、途中入社の方が増加しており、多様なバックグラウンドを持つ人材の活躍で職場が活性化することが増えてきたと感じています。女性管理職の登用についても、これまではロールモデルが少なかったものの、30代から40代にかけての女性従業員には、管理職への昇格に前向きな方が増えてきたと感じています。加えて、男性従業員の育児休業取得も着実に増加しており、家事や育児を分担する意識が浸透してきたと感じています。こうした変化は、働きやすい職場環境の実現に向けた大きな一歩であり、女性のさらなる活躍にもつながると思います。
これらの多様な人材の活躍は当社の競争力の源泉であり、持続的成長を支える基盤になると考えています。

G:ガバナンス

当社では、取締役会の議長をはじめ、指名委員会、報酬委員会、監査委員会の3委員長を社外取締役が務め、外部の視点を取り入れた活発な議論が行われています。これにより、経営に対する健全な監視機能が発揮され、ガバナンスが有効に機能していると考えます。一方で、拠点レベルにおけるガバナンスについては、なお改善の余地があると認識しており、2023年に「国内関係会社ガバナンス強化プロジェクト」を立ち上げ、継続的な改善に取り組んでいます。業務監査などを通じて明らかになった課題やリスクは、リスク管理委員会で適切に取り上げられ、必要な対策が講じられています。こうした一連のプロセスを通じて、当社はガバナンス体制のさらなる強化と透明性の向上に努めています。

財務部門とサステナビリティ部門を兼任する意義

企業にとって最も重要なことは、存続し続けることです。そのためには、安定的な財務基盤が必要で、事業活動を通じて利益創出ができなければ、そもそもサステナビリティ活動を推進することもできません。その中で、当社に期待される利益水準がどの程度であるかという点について、私はROICやROEといった指標を用いて、分かりやすく説明することができます。
一方、「ESG 経営の進化」を通じたサステナビリティ活動が事業成長や企業価値の向上にどのように貢献するかを、具体的な事例を交えて伝えることもできます。事業活動による経済的価値の創出とサステナビリティ活動による環境・社会的価値の創出はともに企業の発展に欠かせない両輪であることを社内全体に浸透させていくこと、これこそが私の役割であり、2つの部門を兼任する意義だと考えています。
当社は100年の歴史を持つ企業ですが、次の100年を見据える上では、現在進めている構造改革を通じて、筋肉質な企業体質へと変革することが不可欠です。各地域で歯を食いしばって取り組んでいるこの改革を必ずやり遂げ、次の時代へとつなげていきたいと強く思っています。