サステナビリティ担当役員メッセージ
ESG経営と財務成果のつながり
サステナビリティ部門と財務部門を兼任して2年目を迎え、サステナビリティ活動は短期的に成果が出て財務数値へ直結するものではないとの認識を強めています。2025年度の利益成長が各地域における継続的な変革の積み重ねによるものであるように、サステナビリティと財務の両輪による価値創出においても、日頃からの不断の取り組みが不可欠であると考えています。
当社では毎年、鵜飼社長が従業員と直接対話するタウンホールミーティングを海外を含む主要拠点で実施しています。こうした取り組みに加え、執行役や部門長がそれぞれの部門に対し、重層的に対話の機会を設けていくことが、会社の方針や施策への理解を深め、従業員のエンゲージメント向上につながるものと考えています。
私自身も、担当の財務戦略部、経理部、ESG推進部、内部統制推進部の皆さんと定期的にミーティングを重ね、自らの考えを直接伝えるようにしています。その際、ESG推進部や内部統制推進部には財務的な視点を、財務戦略部や経理部には持続的に成果を生み出していくためにはESG経営が重要であることを伝えるなど、部門間の相互理解が進むよう意識しています。さらに、全社の環境管理委員会やサステナビリティ委員会、リスク管理委員会といった場でも、あえて決算数字に触れるなど、それぞれの取り組みが財務成果につながっていることを実感してもらえるよう心がけています。
ROICを用いた経営的視点が浸透
当社は2019年度より、企業価値の考え方、すなわち投下資本に対するあるべき利益水準をROICやROEといった指標を用いて説明する取り組みを進めてきました。加えて、執行役や事業部門を中心とする特定部門の部門長の評価指標にROIC目標を組み込むなど、利益と資産効率の両立を促す仕組みも整備してきました。こうした取り組みを通じて、従来は計画や実績に対する利益結果に重きが置かれていたものの、現在では投下資本に対してどれだけのリターンを創出するかという視点が社内に浸透してきました。例えば、かつては期末に利益対策が在庫目標よりも優先されることもありましたが、在庫の増加はROICの低下につながるという認識が共有され、意思決定や行動に変化が生まれています。その結果、2024年度と2025年度の2年間で為替の影響を除く物量ベースで合計330億円の在庫削減を実現することができました。こうした積み重ねが数値として表れてきている点を心強く感じています。
中期経営計画最終年度におけるESG経営
2024年度からスタートした中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalも最終年度を迎え、ESG経営においても、一層の取り組み強化が求められています。
E:環境
当社の商品はエネルギーロスを極限まで低減するという点で、環境に直接貢献できるものだと考えています。加えて、ベアリング単体の性能向上にとどまらず、お客さまの付加価値向上につながる商品・サービスを提供していくことを目指しています。具体的には、お客さまのコスト競争力の向上や設計のしやすさ、さらには各種規制への対応力の強化に寄与するような商品開発です。今後も技術を磨き、お客さまにNTNの商品を選んでいただくことが、環境貢献のみならず、結果として当社の財務成果にもつながっていくものと考えています。
カーボンニュートラルの目標については、カーボンニュートラル推進委員会において、進捗状況や今後の見通しを共有しています。2035年度のカーボンニュートラル達成に向け、2026年度には2018年度比でCO2排出量を30%超削減する目標を掲げており、現時点で順調に推移しています。一方で、カーボンニュートラル推進のための設備投資実施時には、単にCO2の削減を追うのではなく、原価低減との両立を前提とした生産性の高い製造工程の構築につなげていくことを常に意識しています。また、サステナビリティ・リンク・ローンについては、当期も案件が増加し、昨年分を含めて22件、残高は500億円となっています。こうした取り組みを通じて、カーボンニュートラル目標の達成が資金調達面での経済的なメリットにもつながるものと考えています。
S:社会
トップの方針やROICに対する考え方が社内に浸透してきた背景には、体系的な人材育成の成果という側面もあると思います。当社では2021年度より次世代経営人材育成プログラム(NTN Next Leader Program)を導入し、若手管理職に対して経営視点での思考力や経営戦略の基礎から応用、組織変革などを学ぶ機会を提供しています。私自身も約10年前に数ヵ月間、外部教育機関に派遣され、多様な背景を持つ人材との交流を通じて得られた体系的な学びや経験は、その後の意思決定や行動の土台として生きていると感じています。
また、当社の売り上げの約7割は世界各地の拠点を通じた海外市場向けであり、多様な歴史的・文化的背景を持つ人材と「協働する」ことが欠かせません。近年は日本でも外国籍従業員の採用が増えていますが、日本においても海外においても、多様な背景を持つ従業員(人材)同士がお互いの違いを理解し受け入れながら、目標に向かって力をあわせることにより、組織としても個人としてもさまざまな局面で幅広い選択肢を持つことができるようになります。このような世界各地での多様な人材との「協働」や人材育成への継続的な投資は、組織全体の視座を高め、企業としての総合力の底上げにつながっていくものと考えています。
一方、過去に、当社のサステナビリティ活動に対する第三者機関評価において、お客さまの求める水準に達していない項目が確認され、評価が改善されない場合には取り引き継続にも影響を及ぼしかねない状況に直面しました。これを受け、この情報を執行役が出席するミーティングで速やかに共有し、その後数ヵ月にわたり、改善に向けた社内への働きかけを強化した結果、お客さまの求める水準を満たす状態へと着実に改善させることができました。サステナビリティへの対応は、取り引き継続にも影響する重要な経営課題であることを改めて認識した事例です。
本件は、財務面での価値向上を進める上で、非財務のサステナビリティ活動の推進との結び付きが不可欠であることを示すほんの一例にすぎません。両領域を担当する執行役として、今後もこの連携を一層強化してまいります。
G:ガバナンス
2023年に立ち上げた「国内関係会社ガバナンス強化プロジェクト」は、現在も形を変えながら継続的に取り組みを進めています。具体的には、関係会社の役員を対象としたeラーニングを年2回実施し、遵法意識の醸成や役員としての役割理解の深化を図ってきました。また、各種規程の整備も着実に進んでいます。こうした基盤整備に加え、今年度は本社の執行役が複数の子会社の監査役にも就任する体制を構築し、私自身も監査役として意見を述べる機会がありました。さらに、毎年特定課題を深掘りするテーマ監査を開始し、初年度は関係会社のIT体制点検を実施するなど、実務面での統制強化にも取り組みました。
一方で、社外取締役を委員長とする監査委員会による海外も含めた主要拠点への往査が定期的に行われており、拠点ごとの個別問題に加え、会計的な議論や内部統制のあり方などについての課題提起が行われ、執行サイドでの改善活動につながるケースが増えています。指名委員会や報酬委員会も社外取締役が委員長を務めることで、活発な意見交換が行われ、グループ全体としてガバナンスの実効性は着実に高まっていると考えています。
次期中期経営計画に沿ったマテリアリティの見直し
現在のマテリアリティは、2020年12月に特定したものであり、当時はSDGsへの対応を意識しつつ、「社会からの期待」と「当社事業との関連性」の2軸で整理しました。この枠組みは現在においても一定の妥当性を有しており、重要な経営課題を的確に捉えているものと認識しています。
一方で、その後の事業環境や社会的要請の変化を踏まえると、マテリアリティの位置付けをあらためて見直していく必要があると考えています。特に近年は、企業が環境・社会に与える影響と、環境・社会の変化が企業価値に与える影響の双方を捉える「ダブルマテリアリティ」の考え方が広がっており、当社においてもこうした視点を踏まえた整理が求められています。また、従来以上にステークホルダーとの対話を取り入れ、透明性と納得性を高めていくことが重要です。
今回の見直しにおいては、既存のマテリアリティの妥当性を検証した上で、必要に応じた見直し・再整理を行います。その結果として、大きな変更に至らない可能性もありますが、その場合においても、現時点の経営環境や社会課題を踏まえて改めて議論を尽くすこと自体に意義があると考えています。
来年度からスタートする次期中期経営計画においては、マテリアリティと経営戦略との連動性をこれまで以上に高めるとともに、各施策やKPIとの紐付けをより明確に示し、当社の持続的成長に向けた道筋を社内外に分かりやすく提示していきたいと考えています。