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脱炭素社会への貢献

当社グループは、脱炭素社会に向け、「風力発電の普及、水素化社会への貢献」、「自動車EV・電動化への省エネルギー(基盤商品)」、「自動車EV・電動化への省エネルギー(新領域)」、「製造設備の高効率化」、「軸受再生ビジネス」の5つの取り組みに注力しています。

脱炭素社会に向けて、当社グループが注力する5つの取り組み

脱炭素社会に向けて、当社グループが注力する5つの取り組み

自然エネルギーを利用した持続可能な社会の実現

風力発電の普及、水素化社会への貢献

カーボンニュートラル社会の実現に向け、風力や太陽光を利用して発電する自然エネルギーや、燃焼時にCO2を排出しない水素エネルギーが、次世代のクリーンエネルギーとして世界的に注目されています。
風力発電分野では、洋上風力発電などを中心に、発電装置の大型化が進み、メンテナンスが容易にできないことから、従来以上に構成部品の高耐久性、高信頼性が求められています。また、水素関連分野では、水素ステーションなどの水素関連インフラで用いる転がり軸受や樹脂商品の長寿命化が求められています。
当社では、これら商品開発の取り組みにより、持続可能な社会の実現に貢献します。

風力

カーボンニュートラル社会の実現に向けて風力発電事業が拡大しています。特に近年、風向の安定した海域で洋上風力発電装置の設置が進んでいます。洋上風力発電装置は、陸上に比べて大型化、かつ、構成部品の高耐久性、高信頼性が求められています。これらのニーズに応えるため、ころ表面に耐摩耗性に優れるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)被膜を形成した「左右列非対称自動調心ころ軸受」を開発、市場展開し、転がり軸受の信頼性を高めています。
さらに、当社では風力発電の稼働効率向上を目的に、風力発電装置用状態監視システム(CMS)である「Wind Doctor®」を用いた稼働状況を風力発電事業者に配信するサービスを提供しています。2022年、風力発電装置のメンテナンスに特化した株式会社北拓(以下、北拓)と業務提携し、風力発電向けのメンテナンス事業を拡大しています。当社のCMSを設置いただいた風力発電事業者に対して、異常傾向がみられた場合、情報配信するとともに、メンテナンスの必要性を提案します。その後、依頼を受けて北拓と共同で風力発電装置を点検し、異常部位の特定や、補修軸受の手配を一括して実施します。異常検知、検査、補修までのサービスを一連で受けることができると、発電業者からご好評をいただいています。
今後、増設が見込まれる洋上風力発電装置には、状態監視の精度向上と正確なデータ解析に基づく適切なメンテナンスがより重要になります。これらのサービスをワンストップで提供できるモノ売り・コト売りの両輪メーカとして、風力発電装置の市場拡大に貢献してまいります。

左右列非対称自動調心ころ軸受

左右列非対称自動調心ころ軸受

Wind Doctor®

Wind Doctor®

水素

水素は次世代エネルギーのひとつとして注目されており、その活用のために「つくる、はこぶ、ためる、つかう」のあらゆる場面で技術開発がグローバルで活発に進められています。当社は、燃料電池自動車(FCV)の普及に欠かせない水素ステーションの高圧水素圧縮機に用いられる商品の適用開発を進めています。水素関連装置に使用される機械部品は、水素暴露や高圧など特殊環境下で使用されるため、より高信頼性、高耐久性が求められます。
当社では、軸受の軌道輪表面に硬質で微細な金属化合物を多数分散させた新規鋼材を開発するとともに、新たに開発した特殊熱処理技術を組み合わせることにより、水素に起因する軸受の早期破損に対して、当社標準軸受と比較して3倍以上の長寿命化を実現した耐水素脆性軸受を開発し、サンプル試作および納入を開始しました。
また、当社の複合材料技術を駆使して開発した樹脂商品が水素環境用シール部材として採用されています。これら商品のさらなる高機能化に向けて、産学連携での開発にも取り組んでいます。

耐水素脆性軸受

耐水素脆性軸受

エネルギーロスの低減

自動車EV・電動化への省エネルギー

カーボンニュートラルの達成には、自動車の電動化、EV化が必須であり、車両駆動に必要な電動駆動ユニットの高機能化、高性能化が加速しています。電動駆動ユニットの小型化やモータの高速回転に対応した自動車用深溝玉軸受や、ハブベアリングにエネルギー回生機能や転舵機能を付与したモジュール商品などの開発により、電気自動車の省エネルギー化に貢献します。

高機能軸受の提供(基盤商品)

EVやHEVに搭載される電動駆動ユニットはさらなる高効率化、小型・軽量化の要求が高まっており、モータをインバータおよび減速機と一体化したe-Axleの開発が活発化しています。当社では、dmn値180万回転の「EV・HEV用高速深溝玉軸受」をすでに市場展開し、お客さまより高い評価を得ています。小型・高速化するモータ用や減速機用に使用される転がり軸受にはさらなる高速回転が求められ、軸受の発熱と潤滑条件による熱収支のバランスを最適化する供給油量の計算手法の確立、遠心力による変形を抑制するための保持器形状の見直しにより、軸受の内部諸元を最適化し、オイル潤滑下でdmn値220万の高速深溝玉軸受を開発しました。
さらに、駆動装置全体の軽量化に伴い装置のハウジングも薄肉化傾向です。回転負荷による外輪変形を起点に、ハウジングと軸受のはめあい面で軸受が緩やかに回転してずれる「クリープ現象」が発生することがあります。軸受外輪の外径面の一部に逃げ部を設けて、ハウジングと軸受のはめあい面を不連続とする設計とし、クリープを停止させ、装置の異音や振動、軸受の寿命低下を防ぐ「クリープレス軸受」を開発しました。
今後、自動車市場においては、EV・HEVの進展に対応した軸受の需要がさらに拡大することが見込まれます。引き続き、当社のコアコンピタンスの活用、次世代技術の取り込みを通じて、商品ラインアップを充実させ、市場ニーズを先取りした、カーボンニュートラルに貢献する商品開発を進めます。
(*dmn値:軸受の回転性能を表す指標 転動体ピッチ円直径mm×回転速度min-1

EV・HEV用高速深溝玉軸受

EV・HEV用高速深溝玉軸受

クリープレス軸受

クリープレス軸受

高機能モジュール商品の提供(新領域)

当社が培ってきたハブベアリングの技術を駆使し、左右の転舵角度を個別に補正する後輪用ステアリング機能付ハブベアリング「Ra-sHUB」を開発しています。
市場にある後輪転舵システムは、高級車に採用されるマルチリンク方式などの一部の懸架装置にのみ搭載が限定され、そのままの構造では大きな転舵角をとることは困難です。
「Ra-sHUB」は、当社のハブベアリングに、独自の技術で転舵機能を付与したモジュール商品です。既存のハブベアリングのように小型で、懸架装置の種類を選ばず搭載でき、後輪転舵を実現します。前輪の転舵角や走行情報から後輪の転舵角度を左右別々に制御することで、車両のコーナリング性能や高速直進安定性を向上させることができます。低速時には最小回転半径を小さくして、EV化などによるロングホイールベース化した車両の小回り性、タイヤの走行抵抗を抑えることもできます。また、自動運転のレベルアップに伴い、車両運転制御はさらなる高度化が求められます。「Ra-sHUB」は危機回避時の安全走行にも寄与します。

「Ra-sHUB」の特徴

  • ハブベアリングに転舵機能を付与したモジュール商品
  • 後輪の角度を左右独立で制御
  • 転舵角±10°
  • 車両のコーナリング性能や高速直進安定性を向上
  • 車両の最小回転半径を低減

Ra-sHUB

Ra-sHUB Ra-sHUB

製造設備の高効率化

製造現場の生産性向上に向けて、設備の稼働状態を監視し、そのデータに基づいて的確かつ計画的にメンテナンスや部品交換をすることで、設備のダウンタイム(稼働停止時間)をできるだけ抑えたいという要望があります。さらに近年では、DXやIoT技術の進展に伴って、場所や時間の制約を受けない装置の遠隔監視や自動モニタリング、さらには、入手した状態監視情報の活用による製造品質の安定化や向上へのニーズも高まっています。
このような状態監視ニーズに対して、標準転がり軸受に、軸受寸法および負荷容量を変更することなく、発電ユニット、無線通信デバイスを内蔵し、温度・振動・回転速度のセンシング情報を無線送信する「しゃべる軸受®」を開発しました。軸受の回転により発電する電力を用いて、センサや無線通信デバイスを動作させ、センシング情報を自動で発信します。またセンサを軸受に内蔵しているため、装置ハウジングにセンサを外付けする場合に比べ、感度よく軸受の状態を検出し、より早期での異常検知が可能です。
本開発品により、高度な状態監視を実現し、製造設備の高効率化、生産性向上に貢献します。

しゃべる軸受®

しゃべる軸受

軸受再生ビジネス

当社は、製紙用超大形軸受、鉄鋼用大形軸受、鉄道車両用軸受など、さまざまな機械設備で使用された軸受の再生事業への取り組みを進めています。これらのお客さまからのご要求に対し、軸受技術ノウハウに基づく軸受の最適な再生サービスを提供します。さらに、軸受の適切な使用方法のトレーニングや設備の状態監視サービスなどもあわせて、「安全と快適の提供」や「エネルギーロスの低減」、「資源循環・汚染防止」などの当社グループのマテリアリティに対する総合的な取り組みを拡大していきます。

製紙機械用超大形スフェリカルローラ軸受

製紙用超大型スフェリカルローラ軸受

環境貢献商品の開発

当社は、企業理念として「新しい技術の創造と新商品の開発を通じて国際社会に貢献する」を、環境基本方針の第1項には「自社技術による地球温暖化防止への貢献」を掲げて事業活動を展開しています。当社の主力商品である軸受やドライブシャフトなどは、最終製品のエネルギー損失低減に寄与するため、そのすべてが環境貢献商品ということができ、その中には、先人の功績としてすでに広く社会に普及しているものと、当社の技術力・開発力によりさらに環境貢献度を高めたものが含まれます。また、自然エネルギー商品は、再生可能エネルギーを創出することで、CO2排出量の削減につながる環境貢献商品です。
当社では、それらの環境貢献度を当社基準に基づいて数値化し、よりグレードの高い環境貢献商品の開発・提供によって企業理念を具現化するよう不断の努力を続けています。

環境貢献商品の定義

NTN商品の分類・グレードと定義

NTN商品の分類・グレードと定義

環境ファクタ・環境効率の算出方法

環境ファクタ・環境効率の算出方法

取り組み成果の推移

当社売上高の約5割を占める主要商品であるドライブシャフトおよびハブベアリングと、自然エネルギー商品の2023年3月期のCO2削減貢献量は147.4万トンとなり、近年の開発成果と言えるS~B-ecoグレードの環境貢献商品の売上比は、2023年3月期には52.6%となりました。

売上高の推移

売上高の推移

環境貢献商品グレード構成比の推移(ドライブシャフトおよびハブベアリングなど)

環境貢献商品グレード構成比の推移(ドライブシャフトおよびハブベアリング)

CO2削減貢献量

CO2削減貢献量