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社外取締役対談

昨年初めて行った社外取締役対談では、NTNのガバナンス上の課題や価値創造への取り組みについて、辛口の本音を語っていただきました。
あれから一年。NTNの新たな課題について、今回も社外取締役の2人が、熱く意見を交わします。

和田 彰

2005年6月  日立造船株式会社 常務取締役
2006年6月  株式会社ニチゾウテック 常勤監査役
2011年6月  当社 社外取締役(現任)

津田 登

2005年6月  三菱化成工業株式会社(現 三菱ケミカル株式会社) 執行役員
2014年4月  株式会社三菱ケミカルホールディングス 代表取締役副社長執行役員
2016年6月  当社 社外取締役(現任)

テーマ1 グローバル本社としての課題

昨年指摘したグローバル本社としての課題(国内外の一体化の遅れや、責任の所在の問題など)について、この一年間、取締役会でどのような議論がなされ、どのような変化があったか。

個別最適から全体最適への移行

津田:

一年で大きく変化するということはありませんが、昨年のわれわれ社外取締役の発言の趣旨は、取締役会で意識して議論されていると感じます。そのひとつに、グローバル調達の改革が挙げられるのではないでしょうか。調達改革は、この一年で大きく前進した点です。スタートしたばかりなので、今後どのように機能していくのかが重要になるでしょう。もうひとつは、需給センター*についてです。この2つは、この一年でスタートラインには立ったのではないかと思います。

*需給センター : 基幹システムの再構築に伴い、統括的・一元的な管理による棚卸資産回転率や業務効率、納期遵守率の向上を図る目的で2018年10月に新設。

和田:

津田さんのおっしゃるとおり、一年で大きく変わることはありませんが、8年間社外取締役を務めてきて、われわれの発言に沿って取締役会が少しずつ変化していることを感じます。調達本部の担当執行役員として、エルベ ブルロ氏*が今年着任したのも大きな変化です。今まではNTNから人材を登用してきました。そこに、買収したフランスの子会社であるSNRから人材を迎えたことは大きな変化といえます。欧州からの人材を本社のグローバル調達のヘッドに据えたことで、私は2つの変化を期待します。ひとつは彼らの視点でのものの考え方や取り組み方を学べる点です。もうひとつは、これまで買収子会社がゆえに遠慮してきた部分があったのではないかと思いますが、その人材を内部に取り込むことで意思疎通が改善されることです。NTN本社の人材と海外の人材とがお互い良いところを出し合うことが、欧州でのビジネスの活性化につながるのではないでしょうか。

*エルベ ブルロ氏 : 欧州・アフリカ州地区副総支配人兼NTN-SNR副社長で、2019年に本社執行役員調達本部担当に就任。

津田:

今までもテレビ会議などで多くの議論はしてきました。しかし、顔をあわせて初めて伝わることもありますね。私は、最適な需給体制がグローバルに構築していけるかどうかも、社外取締役として注視しています。昨年10月に需給センターをシステムの再構築も含めて設立しました。これによって、国内外の原価の比較がひとつの部門で確認できるようになれば、調達も含めてグローバルでの判断が可能になります。問題は、調達は流れをつくることができればスムーズに進められますが、需給については事業本部間、そして製造と営業との間で調整が必要な点です。この点は仕組みができたから大丈夫というわけにはいきません。国内外の子会社も含めて事業拠点ごとにニーズが違います。全体最適を考えることが重要ですが、売上高や業績評価を考えると、一朝一夕では判断できない経営の問題です。まずは国内の需給センターを軌道に乗せること。それから、グローバルに波及するまでに2、3年はかかると考えます。現在の需給センターは事業本部間の“仲介者”の役割になっていて、事業本部の力関係でどこかが我慢を強いられることも起きてきます。需給センターの実行力が今後の課題になってきます。

和田:

そうですね。需給センターで最も難しいのは、事業本部ごとに異なるビジネスのやり方の調整です。自動車事業は、お客さまのニーズが年単位で分かります。従って、計画に沿って大量生産ができる。一方、産業機械事業は自動車事業に比べるとオーダーメイドでお客さまに対応しているようなところがあり、製造現場と密にコミュニケーションを取る必要があります。製造現場としては、自動車事業のような量産のほうが作りやすく、収益を確保しやすいので優先する傾向にあります。この量産体制をダウンさせると収益性が落ちてしまうので、調整が難しいといえるでしょう。また、補修事業は収益率が高いですが、これは自動車事業のOEMによる量産効果を享受した結果といえます。補修事業のニーズは大量品種・少量生産ですが、このニーズをそのまま製造現場で実行すると、収益が確保できません。補修事業のニーズをどこまで活かしていくのか、ここのバランスが難しい。まさに経営の判断が必要になります。良いものを大量に、高い品質で作るという体質を変えていくことが重要で、そのひとつを担うのが需給センターです。今までは各本部主体の個別最適で需給を決定してきました。それを、需給センター主導でやろうとすると、メリットを享受できる部門がある一方、犠牲になる部門や製造現場が生まれてくる。この調整が難しいのですね。

津田:

業績がここのところ厳しいことも課題です。これは外部要因も当然ありますが、役職員全体で危機意識を持たないといけない。それぐらいの状況です。今の状況を前提として将来を考えないといけません。もう少し時間軸の意識を短く持って、危機感を高めて経営を行うことが求められます。

和田:

すべての品目を当たり前のように生産し、売上は伸びても収益が伸びない状況が出てきています。収益を第一に考えて、内製するのか外部に任せるのかなど、もっと厳しく追求することが必要になるでしょう。さらに、お客さまのニーズをどこまで汲み取るのかなどを判断することも求められます。お客さまの視点で考えると、当然当社の内製品が良いのですが、売上と照らしあわせてお客さまに納得いただくご提案をする場面もあるでしょう。昔と違って、少品種大量生産から多品種少量生産に変わってきていますので、売上は上がっても利益は減るという状況では、製造現場で段取りよくしないと、疲弊してしまいます。この状況をどう打破するのかが問題でしょう。

津田:

おっしゃる通り、経営本体として利益率の低い受注を失う覚悟があるかどうかなのです。全体最適を優先させた結果売上が減少したから、担当した製造部門や製造子会社の評価を下げるというようなことがあってはいけません。年次計画で売上が減少する場合があっても、前年との比較で評価するのではなく、年次計画の中での比較を行うなどの工夫が必要だといえます。

テーマ2 マーケティングの課題

昨年は、マーケティングの課題について、これまでのB to BからB to Cに近い商材におけるマーケティング手法の違いと、それに対する対応の遅れを指摘したが、変化はあったか。

アライアンスの重要性

和田:

単純なベアリングは、いずれ新興国に取って代わられるでしょう。B to B向けでもベアリングをユニット化するなど、付加価値の高い特殊なベアリングが求められていきます。一方で、新規事業については、良いものがいくつかあって、全国規模でシェア獲得の可能性を感じています。自然エネルギー事業での災害対応商品など、エンドユーザーに近いものは今後さらにニーズが増すでしょう。自然エネルギー商品事業は、売上規模はまだ小さいですが、地道に伸ばしていくことが重要です。また、営業がベアリングを売り込んでいく中でお客さまから得られる意見や情報を、もっと開発部門や技術部門とグローバルに共有して、彼らが何を求めているのか、次の時代に生き残る種を見つけることも重要ですね。

津田:

新規事業のマーケティングは当社の人材だけではなかなか難しいと感じています。また、先行して人材を多く抱えることは現実的ではありませんので、今後はパートナーシップが本当に重要です。自前ですべてをやることからパートナーとの協業へ。これは、昨年もお話しましたが、パートナーを組む場合は、協業する魅力や優位性がある商品が必要ですし、それを持っているパートナーを選ぶ必要があります。

和田:

パートナーとの協業は私も重要と感じています。例えば、手首関節モジュール(i-WRIST)は非常に良い例ですね。映像技術に長けたパートナーと組んだことで、生産現場の最終検査で合否判定するときに役立つ競争力のある装置となりましたし、今後の省人化ニーズにマッチした商品です。当社の技術力と組み合わせるともっと良い商品を生み出すことができると考えている他の企業もあると思いますよ。

津田:

新規事業ももちろん必要なのですが、既存事業の抜本的な収益向上の優先度が高いことも事実です。利益が減っている根本的な原因を解析して、既存事業も変化させないといけません。システム投資などで投資が膨らんでいることや、グローバルに人件費が上がっている現状で、既存の事業を今までと同じ手法、同じ人でやっていると、当然のことながら後退してしまいます。どのように省人化が行われてきたのか、同業と比べてどこが弱いのか、調達力なのか、プロダクトミックスで収益の悪いものをやらざるを得ない現状があるのかなど、これらの点をしっかりと分析し議論することが必要です。中期経営計画の立案時はそれなりに議論するのですが、そこからずれてきている点があるので、足元の業績を精査し、それに対する手を打っていくほうがプライオリティは高いのではないでしょうか。忙しいけれども利益が上がらない、その結果給与も上がらないとなると、従業員の士気も落ちます。このことについて、取締役会として強力なメッセージを発していく必要があると考えています。工場の老朽化に対応する設備投資、省人化のための設備投資、需給センターのようなシステム基盤構築が必要とされる設備投資といったやらなければならない設備投資案件は多くあります。一方、外部環境が悪化する中で、想定されるキャッシュ・フローで何に投資するのか、業績が厳しくても投資を優先させるのか、あるいは投資を控えるのか、これらの優先順位がとても重要で、経営のかじ取りは難しいといえるでしょう。

テーマ3 この一年の取締役会の変化

昨年末に初めて機関投資家向けにESG説明会を開催し、今年2月には初めて「社長と従業員のダイアログ」の機会を設けた。これらは、投資家の意見や従業員の意見を経営に取り込んでいこうという前向きな経営の動きのあらわれだが、この一年で取締役会を通じて変化を感じられることがあるか。

執行と監督の分離によるスピードとモチベーションのアップ

和田:

経営のまっただなかにいるとあまり分かりませんが、良い方向に進んでいるのは事実です。

津田:

取締役会は発言しやすく、忌憚のない意見が言えますが、一方で、議論する必要のないことにまで時間をかけているのではないかと感じることも多いです。そのような不要な内容は、除かないといけないと感じていました。それもあって今年、監査役会設置会社から、指名委員会等設置会社へ、機関設計の移行を決断しました。

和田:

これは大きな変化ですね。私たち社外取締役の役割を評価し、前進させる決意表明であり、楽しみにしています。津田さんがおっしゃるように、これまで取締役会での議論の中には、本来執行部門で決断すべき細かいものが多かったのも事実です。執行と監督とを分けて、執行部門には責任を持って判断していただくことが重要です。今まで当社には、重要事項の判断を取締役会で決めてもらうという風土がありました。上からの指示を待つという姿勢から、今後は執行部門が執行責任をしっかりと全うしていく体制になったのです。これによって、社内の動きがスピーディーになり従業員が仕事に対して前向きに取り組める環境を整え、モチベーションが上がることを期待しています。

津田:

そうですね。今までの取締役会では、みんなで決めることが反対に、責任の所在が不明確になる一因になっているのではないかと感じていました。個別の設備投資が妥当かどうかというような細かい議論が取締役会の議題となっていて、収益性を高めるためにはどの分野のプライオリティを高めて、どの程度の枠の中でやっていくのかといった本当に必要な議論が少なかったといえます。先ほど、需給センターが部門間の“仲介役”になっていることへの課題を指摘しましたが、例えば、このような課題を取締役会で議論することによって、執行部門では判断できない、全体最適のための決断が可能になるのではないかと思っています。過去の計画に対する進捗状況の確認や大きな方向性の決定など、本来の取締役会事項に専念すること、加えて、評価と人事、そして報酬を決めることが今後は重要です。しかし、制度を整えるだけでは意味がありません。そこに魂を込めることで新たな制度が意味を持つのです。

和田:

今まで、社外取締役は2人しかいませんでしたが、今後は社外監査役も社外取締役となり議論していくことになります。監査役会には良い面がありましたので、監査役の方々も取締役として取締役会に参加することで、その良い面を取締役会として機能させていければ良いと考えています。

津田:

今後は予算を立てる前の早い段階から、執行部門から意見を事前に聞いて議論をするような取締役会になっていくと思います。また、社外役員が5人になりましたので、社外役員の中での議論や要望を執行部門や取締役会に要請するなど、提案型の取締役会になるのではないでしょうか。

テーマ4 この一年を振り返って伝えたいこと

この一年を振り返って社外取締役として伝えたいことについて。

経営による断捨離の判断

和田:

「ヒト・モノ・カネ」といいますが、やはり人が重要ですね。さらなるスピード重視の時代になっていきますが、重要なのは人です。人事部は全社員を把握していることが求められますが、それ以上に今後のリーダーシップをとる人の人選が極めて重要です。人事部長の責任も重大ですね。的確な結論を出すために、人事部に人を集めてもらいたい。将来にわたってNTNが存続するためにはより良い人材の確保が必要で、1、2年では成果は出ません。5~10年ほどかけて「NTNの人材は変わってきた」と言われるようになればよいです。

津田:

外部のリソースをどのように使うか。新しい事業もそうですが、人材も企業の中だけでの育成ではなくて、外部からもマネジメントができる人材を集めてくるなどいろいろなことを考えないといけません。特に海外では重要だと思います。内部の人材だけでは当社のような規模の会社は回りません。また、外部の経験がないから社内の“前例踏襲”に陥りやすい。ビジネスは前例踏襲ではいけないと私は常々思っていますが、前例踏襲かどうかを気付かせてくれるのは外部の人材です。外部のさまざまな企業や人と付き合うことが重要で、“前例踏襲”は悪、“朝令暮改”もときには必要だと感じます。

和田:

マーケティングも変革が必要ですね。大阪が地盤沈下しているので、アンテナ組織が重要になってきます。例えば、開発部門も自動車本部も、お客さまのニーズをキャッチしやすい東京に移しましたね。よい決断であったと思います。また、当社は自前主義ですが、これも必要に応じて外から調達するというような判断をしないと、人ばかりが増えていき利益率が下がることになります。

津田:

働き方改革で残業減らすという命題に対して、単に残業を減らせというだけでは、従業員にストレスがたまるだけです。働き方改革は一種の企業の断捨離です。何を取って、何を捨てるか、極めて重要な経営判断が必要で、現在の当社の大きな課題だといえます。

和田津田:

今回の指名委員会等設置会社への移行で取締役会の人数は減りますし、決議事項が減るなど、機能が大きく変わります。今までの取締役会では取締役が執行部門の責任者としてすべて発言していました。今後は、執行部門の責任者や実務担当者をどんどん招請して、次の世代の取締役候補者や幹部候補者の報告の場が多くなるのではないでしょうか。このような議論の中から取締役会が人材発掘にも役立てるような場にしていきたいと思います。