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社外取締役 会談

NTNレポートでは、NTNの経営やサステナビリティの諸課題について、毎年社外取締役の皆さまの議論の場を設け、その内容を「社外取締役 会談」として掲載しています。今年は小松取締役と、昨年6月に就任された村越取締役に、NTNの現状と課題について辛口の本音をお話しいただきました。

社外取締役 会談

テーマ1 NTN再生に向けたこの1年の取り組みの成果について

NTN再生に向けた中期経営計画「DRIVE NTN100」Phase 2の2年目が終わりました。再生に向けて不退転の覚悟で取り組んだ、この1年の振り返りをお願いします。

小松様:

本来であれば中期経営計画というのは、事業ポートフォリオをどう転換していくかというビッグピクチャーを描いた上で、どの事業に重点を置くかというステップを議論すべきだと思います。しかし、現在取り組んでいる中期経営計画に関しては、赤字から脱却し、利益率を上げて、キャッシュ・フローおよび財務体質を改善する、次の飛躍のための“社内整備”の3年間という位置づけで、当初から改革を進めてきました。
その点で言うと、2021年3月期と比較して、営業利益率、キャッシュ・フロー、財務体質は改善しており、従業員の皆さまが頑張った結果だと評価できると思います。ただ、営業利益率やキャッシュ・コンバージョン・サイクルなどの改善の内容とスピードに課題があると認識しています。資材・運搬費の高騰など外部環境の急激な変化も要因としてあるでしょうが、値上げ交渉のチャンスでもあったわけで、もう少し明確な意志があれば、より良い結果であったのではないかと思います。
鵜飼社長は強い意志を持って、十分な利益が確保できないビジネスについては取り引きをやめる覚悟で交渉してよいと、何度も社内に発信しておられ、値上げや不採算ビジネスの縮小には全社で取り組んでいます。結果は、産業機械事業やアフターマーケット事業の利益率は順調に改善している一方で、自動車事業は前期も営業赤字となってしまいました。現場の従業員の方々は他事業部と同様頑張っておられることを考慮しますと、自動車事業本部のマネジメントが収益改善のロードマップとKPIを共有し、明確な意思を伝えきれていないのではないかと思っていますし、皆さんが自覚なく固定費をカバーするために営業赤字となる受注を受けることを懸念しています。まずは、ビジネスの判断基準を、売り上げと粗利ではなく、営業利益率と在庫水準是正につながるキャッシュ・フローに変更して止血をする必要があります。同時に、持続的に適切な利益を計上できる事業構造の変換のプランを早期にとりまとめ、社内外と共有することを期待しています。

村越様:

私は昨年社外取締役に就任させていただいたばかりなので、この1年間のNTNを見て感じたことをお話しします。小松さんがおっしゃったように、事業には一定のライフサイクルがあり、それぞれの時点で、事業ポートフォリオをどう変えていくかを考えなくてはいけないと感じています。この観点で当社の最大の課題は、最大の事業部門である自動車事業を今後どうして行くかという点だと思います。当社の自動車事業はOEM向けが大部分を占めていますが、足元の原料高や自動車生産の不安定さから、必ずしも利益貢献ができていません。各現場は、それぞれコスト低減や原料高の価格転嫁に一生懸命に取り組んでいますが、当社の商品や技術といった付加価値を価格に反映することが必ずしも簡単ではないというのが現状です。これが短期的に解決できる問題なのか、あるいは構造的な問題かという点は、今後の当社の経営のあり方としてよく見ていく必要があると感じています。
鵜飼社長以下執行役の中には、NTNを変革する強い意志はあります。何を会社の座標軸とすべきか、合意形成もできてきています。例えば、大きな船の進路を変えるときは、面舵いっぱいに切っても実際に進路は少ししか変わらない。進路を完全に変えるまでには、舵を切り続けても一定の時間がかかる。同様に、大きな会社の変革には覚悟と忍耐が必要だと思います。また、大きな組織が変革を行うときには、組織にひずみや痛みも伴います。そのことを、舵を取る社長をはじめとする執行役は理解していると思いますが、組織の隅々まで伝わっているかどうか。これほどに大きな改革をしているということについて、管理職以上の人たちが覚悟を持って向かっていけるかどうかという点に課題があるのではと感じています。

小松様:

昨年私はこの場で、「やる気はある、方向性は間違っていない、唯一心配な点はスピード」とお伝えしました。このスピードについては、売価を上げることは想定以上に早くできたと評価しています。世の中の値上げの流れや、鵜飼社長の強いメッセージも影響したでしょう。ただ、在庫削減、工場の統廃合プランをどうするかなど、私が社外取締役になった3年前からお伝えしていることが、思ったほど進んでおらず、依然課題だと思っています。

村越様:

工場について言えば、取締役に就任してから、磐田と桑名にある工場を見学しましたが、古い工場で、増設に増設を重ねてきており、効率性の観点からは課題があると思います。現状では、設備投資を抑制しているため、主力工場である磐田製作所や桑名製作所での効率化投資や省人化投資、無人化投資については制約があるのが実態です。しかしながら、製造業の当社としては、やはり製造設備や製造技術に磨きをかけ、生産性の高さや商品の高品質性において競争力を維持することが、不可欠と思います。これから先、少子高齢化が進み、人手不足も進むと思います。このような環境の中、新しい中期経営計画に向けて工場をどうするのか、どこに投資していくのかを本気で考えるときです。

小松様:

現在の中期経営計画は、あと1年で終わります。組織の再編も含めて、次の中期経営計画に向けて議論が始まっていますが、3年間で達成可能な数値目標にするのではなく、中長期的な目標数値、例えばROEやROIC10%以上を提示した上で、その高い目標の達成に向けての中期経営計画であってほしいと思います。また、執行役の皆さんには各年のアクションプランについては、達成した場合ROEやROICはどれほど改善するのか、達成できない場合のバックアッププランはどうなっているのかを合わせて示していただきたいです。

写真:社外取締役 小松 百合弥 様

テーマ2 NTNのガバナンス体制について

指名委員会等設置会社になり、独立社外取締役が議長を務める体制になりました。ガバナンスの大きな変革について、手応えをお聞かせください。

村越様:

指名委員会等設置会社となり、確かに“形”としては先端をいくことになりました。しかし、実態を伴った改革は道半ばといった印象です。個人的には、欧米のように流動性のあるプロ経営者の市場があり、市場の中から最適な経営者を選んでいくというシステムの中では、指名委員会等設置会社という設計もうまく機能するでしょう。一方、日本のように新卒一括採用で階段を上って経営層に育っていくという社会環境の中で、指名委員会等設置会社が本当に機能できるかという観点では、まだまだ道半ばの感があります。
以前の当社を知らないため比較はできませんが、社外取締役は活発に発言していると思います。ただそれは、取締役会の前の経営会議で執行役の意見がまとまっているから、自然と社外取締役の発言が多くなるだけで、ここには情報の非対称性があると感じています。いずれにせよ、日本型の指名委員会等設置会社として、当社の取り組みは非常に興味もあり、その一員を担う者として私もさらに最適解を探していく必要があると感じています。

小松様:

村越さんがおっしゃるように、指名委員会等設置会社の難しさは私も感じるところはあります。私は昨年取締役会の議長を任されましたが、議長に圧倒的な権限があるかというと、そこまではないというのが実感です。
ただ、今までよりは“ベター”な選択だと私は思っています。その大きな理由は、そもそも社外取締役の数が増えたことと関係します。私たち社外取締役は、会社が持続的に成長し企業価値を向上できるように執行をモニターすることが役割として求められています。そういう意識で会社の経営をモニタリングする人が増えた結果、内輪だけの取締役会と違い、厳しい意見もたくさん出ますし、議長として社外取締役の意見を反映した経営管理体制見直しやその進捗をモニタリングするための報告もお願いできます。また、社外取締役の要望や意見について、社内の取締役や執行役も検討し、対応してくださるケースが多いので以前よりガバナンスは良くなったのではないでしょうか。

村越様:

私は、監査役会設置会社の取締役も経験していますが、機関設計がどうであれ、重要なのは取締役の意識と情報量だと考えます。例えば、私の前職の会社では、取締役会の3日前ぐらいに担当部署の本部長・部長クラスの人が案件について詳細説明を行い、そこで十分に議論が尽くされるので、取締役会でも執行側との情報量の差がある程度緩和されています。私は当社の監査委員会にはできる限り陪席させていただき、常勤取締役から執行役会や経営会議で議論されたことの説明を受けていますが、時間的な制約もあり、情報の非対称性を感じます。“形”として指名委員会等設置会社にするかどうかというよりは、社外役員がしっかりと情報を持てる仕組みがあるかが、取締役会が機能するポイントだと思います。

小松様:

私も同じようなことを以前からお伝えしてきました。これについては、今後改善が進んでいくと思います。今、社外取締役のメンバーの意識はどんどん高まっています。このまま積極的に働きかけていけば、指名委員会等設置会社としてうまく機能していくと期待しています。

写真:社外取締役 村越 晃 様

テーマ3 経営基盤の強化について

カーボンニュートラル戦略推進部の立ち上げや、人事制度の改革など、経営基盤強化の取り組みについてはどのように評価されているでしょうか。

小松様:

昨年まで部署横断で進めていたカーボンニュートラル推進プロジェクトを、グループ経営本部カーボンニュートラル戦略推進部として立ち上げたことは評価しています。部署横断的だと、どの部署が責任をもって問題にあたっているかが見えづらくなり、見落とされて、後で問題になるケースが発生しますが、その心配はなくなりました。しかし、これもやはり中期経営計画と同じで、ただ目の前の課題やタスクに対応するだけではなく、アクションプランを作成してPDCAを回してもらいたいです。その際、そのプランの担当者は誰なのか、事業部まで落とし込むことが必要でしょう。

村越様:

経営基盤の強化というのは、コーポレート機能の強化だと理解していますが、当社は必要な部門はそろっているものの機能としてまだまだ弱いところがあると感じます。これはメーカの特徴かもしれませんが、生産現場すなわち工場ごとに一定の独立性が存在し、どうしても組織としての遠心力が強くなるという傾向にあると思います。逆に言えば、本社のコーポレート部門が求心力を持つことに慣れていないということです。全社最適を徹底するためには、社長や執行役が、全社的な視点を持ち本社部門を強化し、使いこなしていく必要があります。本社組織はあるが、誰も言うことを聞かないということが起きないようにすることが、経営の課題であり、私たち社外取締役がそれを厳しく見ることが重要です。

小松様:

経営基盤の強化という点では、人事制度の改革も必要です。先ほど、村越さんから、大きな改革を進めていることを従業員が理解していないのではないかというお話がありました。どこの会社でも経営のトップと現場の危機感に違いはあります。ただやみくもに危機感を共有するのではなく、人事評価など現実的なKPIを現場まで落とし込み、仕組みで会社を変えるのが、近道ではないかと私は思います。例えば、営業利益率を人事評価のKPIにして、昇格や賞与の査定に反映するくらいのことを言ってもいいかもしれません。そうすると、本部が悪い、生産が悪いなどと、はじめは他責になるかもしれませんが、やがて皆さんがどうすればよくなるのかを考えて動くことができるようになるのではないでしょうか。

村越様:

人事制度については、管理職人事制度の見直しが進んでいると聞いています。形は整っていると思いますが、制度設計だけでは人事制度は円滑には機能しません。実際に人事部自らが現場を知り、それぞれのポジションの人間がきちんと機能しているかを評価していかないといけません。成果主義というのは、むしろ形ができてからが難しいのです。
また、従業員意識調査というのもひとつの指標になると思います。当社でも昨年コーポレート部門だけで実施したと聞いていますが、全従業員に範囲を拡大することで、経営側が会社の実態を知る一助になると思います。その結果により、部署としての課題を抽出し解決していくということもありますし、また場合によっては全社的な課題が抽出されることもあります。後者に関しては、全世代・部門横断的なタスクフォースを設置し、この結果をどう読むか、何を変えるべきか、話し合わせるというのも従業員のエンゲージメントを高めるひとつの方法です。結果を見ておしまいではなく、それぞれの部署に自ら考えさせることが、従業員意識調査の本当の意義です。

小松様:

過去の会談でも、当社のダイバーシティの課題について意見を述べてきました。少し機会があって女性管理職に話を聞いたところ、キャリアアップに対して積極的でない女性が多い印象を受けました。もちろんワークライフバランスを考えて昇進したくないという女性がいるのは当然です。しかし、昇進したい女性もいるはずで、そういう女性がきちんと評価される制度にするべきだと思っています。時短勤務の女性の部長がいて、部署全体が早く仕事を切り上げて帰るというようなことがあってもいいのではないでしょうか。外国籍の従業員の登用も含めて、コロナ禍も落ち着いた今年は、こういった課題に大きな声を上げていきたいと思います。

村越様:

私は、当社の幹部候補者の年齢層がかなり高いというのが気になります。NNLP(NTN Next Leader Program)という次世代の幹部候補生を育成する取り組みもしていますが、参加する従業員の年齢層はやはり高めです。40代半ばくらいから選抜して育てていかないと、いざというとき経営層が育っていないという危機に直面してしまいます。

小松様:

おっしゃる通りですね。たくさんの課題について話してきましたが、NTNの再生のためにも、私たち社外取締役が経営をモニタリングし、働きかけを続けていかなければと、強い使命感を感じています。

新任取締役メッセージ

写真:新任取締役 木谷 泰夫 様

木谷 泰夫

長年の銀行員としての国内外の業務経験によって得た知見や、経営者としての経験を最大限活用し、社外取締役としてNTNの持続的成長に貢献できるようベストを尽くしてまいります。
まずは出来るだけ多くの役職員の方々とのコミュニケーションを大切にし、当社のありのままをその歴史とともにしっかりとスピード感をもって学びたいと存じます。その上で“傍目八目”的な気付きを大事にし、当社を取り巻く環境の変化を正しく理解しながら、健全な会社の成長の一助となるよう職責に沿った提言をしてまいります。
社外取締役ながら常勤の役割を拝命しますので、役職員とともに情熱をもって、多くのステークホルダーの支持を得ながらNTNの発展に寄与できるよう努力いたす所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。