生物多様性の保全
事業活動が生物多様性に与える影響
当社グループは、生物多様性への影響を評価し、適切な保全対策を講じるための基盤を整えています。WWF(世界自然保護基金)の生物多様性リスクフィルター(Biodiversity Risk Filter)を使用し、国内外の生産拠点における影響を評価しました。その結果、物理的リスク(生態系の劣化や種の減少など、自然環境の変化によるリスク)の中で「非常に高いリスク」と評価される指標が存在することを確認しました。具体的には、「汚染」の事業所が24ヵ所、「水の利用可能性」の事業所が1ヵ所該当します。一方、評判リスク(生物多様性に悪影響を与える活動が企業の評判に与えるリスク)については、「非常に高いリスク」と評価される指標はありませんでした。
これらの評価結果に基づき、森林管理、生息地の保全、大気排出・排水・廃棄物管理、種の保護などの対策を進めていますが、まだ多くの課題が残っています。今後、明確になったリスク状況に基づき、想定されるリスクと機会に応じた具体的な対応計画を策定し、徐々に取り組みを強化してまいります。
■当社グループの事業活動が影響する物理的リスク11指標の評価結果
生物多様性保全の取り組み
当社グループは、生物多様性の保全を重要な課題と捉えています。地域住民やNPO法人(特定非営利活動法人)と連携し、自然環境と地域の共生を目指した取り組みを進めています。具体的には、適切な間伐や植林を行い、森林生態系の保全に努めています。また、各事業所の周辺地域では、絶滅危惧種の保護や自然公園の整備など、生物多様性の保全活動にも積極的に取り組んでいます。これらの活動を通じて、地域社会に貢献し、環境保全に寄与しています。
「企業の森」活動を展開
当社グループは、国内において環境保全と地域の持続的な発展を目指し、「企業の森」活動を展開しています。この活動は、地域社会と協力しながら森林保全や地域活性化を図る取り組みです。
主な活動内容は以下のとおりです。
- 植樹
- 森林保全
- 環境教育
- 地域連携イベント
これらの活動には多くの従業員とその家族が参加し、植樹や下草刈り、森林整備、自然観察会などを通じて、生物多様性の向上、地域経済の活性化、環境教育の推進に取り組んでいます。
当社が協定を結んでいる森林面積は、現在合計約42.6ヘクタールです。これらの森林による年間CO2吸収量は約268トンと簡易推計され、生物多様性の保全や地域との共生に加え、自然資本の保全を通じて、当社グループが掲げるカーボンニュートラルの実現を支える取り組みの一つとなっています。なお、当社グループは、事業活動におけるスコープ1・2について2035年度、サプライチェーンを含むカーボンニュートラルの実現を2050年度の目標としています。
今後も森林保全活動を継続し、地域との協働を通じて環境負荷低減に貢献してまいります。
■NTN「企業の森」実施状況
| 活動名 | 概要 | 対象地域 | 開始時期 | 規模 (ヘクタール) |
年間推定CO2吸収量* (トン) |
|---|---|---|---|---|---|
| 森林の里親促進事業 | 駒ヶ根市を支援するとともに、協業で植樹や森の下草刈りなどの森林整備を実施 | 長野県駒ヶ根市 | 2006年4月~ | 21.9 | 137.97 |
| 和(なごみ)の森 | 西牟婁郡が推進する「企業の森」事業に参画し、植樹や森の下草刈りなどの森林整備を実施 | 和歌山県西牟婁郡 | 2017年1月~ | 0.45 | 2.84 |
| しずおか未来の森サポーター | 静岡県主催の「しずおか未来の森サポーター」制度へ参画し、森の下草刈り、野鳥の森整備、散策山道整備などを実施 | 静岡県磐田市 | 2008年4月~ | 15.0 | 94.50 |
| 企業との協働の森づくり | 美作市の市有地を借り受け、NTN「企業の森」として、植樹や森林整備、キノコ栽培、自然観察会などを実施 | 岡山県美作市 | 2008年4月~ | 1.0 | 6.30 |
| NTN こもれびの森 | 桑名を代表する「多度山」で、個人地権者の所有する約4.24haを借用し、ヤマザクラ・モミジの植栽および育林活動を実施することにより森林環境の保全に貢献するとともに、地域との交流・発展に取り組む | 三重県桑名市 | 2010年11月~ | 4.24 | 26.71 |
*年間推定CO2吸収量は、林野庁等の公表データを参考に、森林1ヘクタールあたり年間約6.3トンのCO2吸収を用いて簡易推計した参考値です。実際の吸収量は、森林の樹種、林齢、施業状況、地域条件等により変動します。森林吸収量の制度的な算定・認証に当たっては、J-クレジット制度等において、対象森林の条件やモニタリング結果に基づく方法が定められています。
絶滅危惧種、野生動物の保護・生息地保全
当社グループは、地域社会やさまざまな団体と協力しながら、絶滅危惧種や野生動物の保護および生息地の保全に取り組んでいます。今後も多様なパートナーと連携し、地域の生態系を守るとともに、環境保全にも貢献してまいります。
絶滅危惧種ミヤマシジミ(蝶)の保護活動
長野製作所(長野県上伊那郡箕輪町)では、生物多様性保全活動の一環として、絶滅危惧種ミヤマシジミ(蝶)の構内での保護活動を行っています。ミヤマシジミは「環境省レッドリスト 絶滅危惧IB類(EN)」に指定されており、その保護が急務となっています。
本年度の活動状況として、成虫発生数は345匹となりました。昨年度と同程度であった1化成虫に対し、2化成虫の発生数が例年より少なく、その後の世代の発生数も2024年度ほど増加しなかったことから、年間発生数は前年度を下回る結果となりました。
なお、2025年は長野県内で高温・少雨・多照の傾向がみられ、2024年とは異なる気象条件となっており、こうした環境の違いが発生状況に影響した可能性も考えられます。ミヤマシジミは、気温などの気象条件によって発育速度や羽化時期に影響を受けることが知られています。一方で、発生数は食草であるコマツナギの生育状況や共生アリ、寄生要因、生息環境の管理状況など複数の要因が関わるため、天候のみを原因として特定することはできません。したがって、原因は現時点で特定できていません。
現在、ミヤマシジミの生息数や生息分布は減少傾向にあることが有識者の研究でも報告されています。長野製作所では、構内保護区へのさらなる定着を図り、最終的には人手を介さずとも自然にミヤマシジミが発生する環境づくりを目指してまいります。
そのためには、幼虫の食草となるコマツナギ(マメ科低木)を増やすことが必要です。毎年、コマツナギの種から苗を育て、構内保護区へ移植する活動を継続するとともに、構内保護区の拡張や環境整備を進めています。これからも、地域社会や専門家と協力しながら、生態系の保全に努めてまいります。
■ミヤマシジミ保護区 成虫発生数(長野製作所)

■ミヤマシジミ(左:雄、右:雌)
タイの製造・販売拠点でマングローブ植樹などの環境保全活動を実施
NTNグループのタイ拠点では、2025年度も生物多様性の保全と地域社会への貢献を目的に、製造拠点および販売拠点で植樹をはじめとする環境保全活動を実施しました。昨年は、NTN公式ウェブサイトにおいて、NTN MANUFACTURING(THAILAND)CO., LTD.(NMT)およびNTPT CO., LTD.(NTPT)の活動を紹介しましたが、2025年度はタイ拠点全体の取り組みをより広くお伝えするため、販売拠点の活動も含めて紹介します。
販売拠点であるNTN BEARING-THAILAND CO., LTD.(タイ販)では、2025年6月にクラビ県において、従業員41人が参加するマングローブ植樹活動を実施し、約200本を植樹しました。販売拠点においても、地域社会とのつながりを大切にしながら、自然環境の保全に取り組んでいます。
製造拠点のNMTでは、2025年8月30日にラヨーン県のMangrove Resources Management Center(マングローブ資源管理センター)で活動を行い、従業員117名が参加して1,400本を植樹しました。多くの従業員が参加する大規模な活動となり、地域の自然環境の保全に貢献するとともに、拠点全体で環境保全への意識を高める機会となりました。
また、製造拠点のNTPTでは、2025年5月にチョンブリー県サッタヒープ郡で、従業員とその家族57名が参加する森林保全活動を実施しました。この活動では、マングローブの苗木50本の植樹に加え、周辺のごみ拾いも行い、地域の自然環境の保全と美化に取り組みました。従業員の家族も参加することで、自然保護の大切さを共有しながら、拠点内の一体感醸成にもつながる活動となりました。
さらにNTPTでは、2025年10月にチョンブリー県シラチャ郡のNong Ta Yu Arboretum(ノン・タ・ユー樹木園)でも環境保全活動を実施し、従業員とその家族70名が参加しました。この活動では、トウアズキの種まきに加え、トウアズキおよびヤンナの苗木を合計150本植樹しており、マングローブ保全にとどまらず、地域の緑地保全に向けた継続的な取り組みを進めています。
マングローブは、二酸化炭素の吸収や酸素の生成に寄与するだけでなく、波の力を和らげ、海岸の浸食防止にも重要な役割を果たします。NTNグループは、今後もタイの各拠点で地域に根差した環境保全活動を継続し、生物多様性の保全と地域社会との共生を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
■マングローブ植樹の様子(タイ販)

■マングローブ植樹の様子(NMT)

■森林保全活動の様子(NTPT)

地域への環境貢献
当社グループは、地域への環境貢献の一環として、事業所周辺の道路や河川・海岸、公園などの清掃活動、除草、植樹などを行い、地域社会との相互協力のもとで環境保全活動を推進しています。今後もこれらの活動を通じて、周辺住民などの利害関係者との連携を強化し、良好な関係を構築できるよう一層の努力をしてまいります。
河川草刈り・海岸清掃を通じた地域環境への取り組み
NTN羽咋製作所(石川県羽咋市)では、工場近隣を流れる吉崎川において、河川愛護活動の一環として、川沿いの草刈りを継続的に実施しています。
5月に行われた草刈りには、製作所の従業員8人が参加し、草刈り機を用いて生い茂ったヨシ類などの草刈り作業を行いました。
この活動は、河川の通水性の確保や景観の維持に寄与するとともに、地域の河川環境の保全につながっています。
さらに同製作所では、羽咋市内の千里浜海岸などで実施される砂浜清掃活動「なぎさクリーン運動」にも参加しています。
7月13日に実施された清掃活動には、従業員13人が参加し、海岸に漂着したごみの回収などに取り組みました。
これらの活動は、海洋ごみの削減や沿岸環境の保全に寄与する取り組みです。あわせて、従業員一人ひとりが地域環境と向き合う機会とすることで、環境保全への意識向上を図るとともに、地域社会との良好な関係づくりにつなげています。
■従業員による吉崎川沿いの草刈りの様子(羽咋製作所)

地域と連携した環境教育・生物多様性保全の取り組み
NTN Europe S.A.(NTN EU)では、各拠点において地域と連携しながら、環境意識の向上や生物多様性の保全、資源循環の推進、CO2排出削減につながる取り組みを進めています。
ルーマニアのシビウ拠点では、「Green Week」の活動として地元の小学生を受け入れ、事業活動で発生する廃棄物の種類や、分別回収・選別による再資源化について学ぶ機会を提供しました。子どもたちに資源循環の重要性を伝えることで、地域における環境意識の向上につなげています。
また、NTN EUでは、ルーマニアのシビウ拠点の従業員ボランティアが植樹活動「Plantăm Pădurea CCIFER」に参加し、ルーマニア・プラホヴァ県リパネシュティで4万本のアカシアを植樹しました。森林の再生に向けたこうした活動は、地域の自然環境保全に寄与するとともに、生物多様性の保全にもつながる取り組みです。
さらに、ルーマニアのシビウ拠点において年度を通じてHSEE Daysを開催し、環境・エネルギー・安全に関する教育や啓発活動を実施しました。「Adopt a Tree」では各部門が木を植え、その後の維持管理を担うことで、従業員一人ひとりの環境保全意識を高めています。加えて、省エネルギーに関する啓発活動を実施するとともに、エネルギー消費の大きい設備・装置を洗い出す取り組みを進め、日常業務の中で環境負荷低減を図っています。
ブラジルのクリチバ拠点では、生物多様性への理解を深めることを目的とした環境啓発活動を実施しました。地域の学校に通う6歳から12歳までの子どもたちを対象に、生物多様性の保全をテーマとした絵画コンテストを開催し、NTN従業員も投票に参加しました。地域の子どもたちと従業員がともに環境について考える機会をつくることで、社内外における生物多様性保全への意識向上につなげています。
2025年6月5日には、NTN EUの各チームが「Mobility Challenge」に参加し、通勤時に環境負荷の少ない移動手段を選びました。その結果、片道で延べ3,300キロメートル以上、往復で6,600キロメートル以上を、単独での自動車利用を避けて移動し、1日で1,444キログラムのCO2削減を実現しました。従業員一人ひとりの行動変容を通じて、移動に伴う温室効果ガス排出削減につなげた取り組みです。
NTNグループでは、資源循環・汚染防止、生物多様性の保全、カーボンニュートラルの実現などの環境課題に取り組み、事業活動と地域との関わりの両面から環境・社会的価値の創出を推進しています。
■環境啓発活動の様子(フランス・アヌシー)

■植樹活動の様子(ルーマニア・シビウ)

■生物多様性に関する環境教育活動の様子(ブラジル・クリチバ)
