社外取締役 会談
~社外取締役×執行役によるクロストーク~
執行役
木下 俊平
社外取締役
小松 百合弥
社外取締役
塔下 辰彦
NTNレポートでは、NTN の経営やサステナビリティの諸課題について、毎年社外取締役の皆さまの議論の場を設け、その内容を「社外取締役 会談」として掲載してきました。今年度は社外取締役と執行役によるクロストークとして、取締役会議長の小松取締役と昨年6月に就任された塔下取締役に加えて、経営戦略担当の木下執行役で、NTN の現状と課題について本音でお話しいただきました。
中期経営計画「DRIVE NTN100」Final 1年目の振り返り
- 木下:
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はじめに中期経営計画の初年度を振り返りますと、正直なところ厳しい出だしとなりました。売り上げが低迷したため、ROICなど営業利益に関係する目標を達成できませんでした。一方3年間で350億円の特別損失を織り込んだ構造改革については、欧州、中国、カナダでの工場統廃合による生産の効率化やコスト削減などを前倒しで進めました。米国での通商政策変化を受けて一部見直しが必要となりましたが、2025年度から日米を連動させた再編成を加速していく計画です。アフターマーケット向け販売構成率を高める活動は、主に市場の大きな海外市場での需要開拓に取り組んでいますが、ロシアによるウクライナ侵攻など市場環境悪化の影響を受けました。アフターマーケット拡販のための日本での在庫整備・生産能力増強や、海外関連会社などからの完成品調達は進んでおり、今後も加速します。
- 小松様:
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構造改革については、想定していたより厳しい状況となった中でも前倒しで生産を止めるなど、従業員は粘り強く取り組んだと評価しています。ただ機関投資家を筆頭に外部ステークホルダーの目から見ると、スピードと改革の目標設定に物足りない点が残るのも事実です。彼らは、業界ベストプラクティス企業と同等の財務指標が狙える体制を構築する徹底した構造改革に3年程度で目途をつけ、中長期的(5-10年)に成長と競争優位性を持続できる企業になることを期待しています。期待を大きく裏切らないためには、少なくとも社内目標は高く設定し、達成のためにどうすべきかと日々考える必要があります。もちろん米国の状況など想定外の事態は起こりますが、想定外が起こる状況も予め想定して施策を考え実行すべきです。その意味ではマインドセットを「改善」から「改革」に転換し、仮に在庫を半減するという目標を設定したのであれば達成するまでやり抜く。そうした姿勢でスピードアップすれば、結果はついてくると思います。
- 塔下様:
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昨年から取締役となり、国内主要5製作所と近接する4グループ会社を回ってきました。それぞれ現場では、従業員の皆さんが在庫削減などの課題に懸命に取り組んでいる様子が伝わってきました。ただ自分の持ち場の中だけに思考がとどまっているようにも感じます。改革を進めるためには各々の意識の次元を変える必要があります。目標を認識しても、習慣化した意識はそう簡単に変わるものではありません。現場の皆さんは状況を認識しながらも、日々の行動が成果にうまくつながっていかないジレンマを抱えているように感じました。その結果として、棚卸資産回転率以外の主要指標が前期を下回ったのではないでしょうか。
- 小松様:
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従業員は頑張っていると思います。しかしROICなどの観点で見れば目標には達していないため、従業員としては自分が貢献している実感を得られないのではないでしょうか。状況を変えるために、果敢にチャレンジする人を積極的に重用する事例がもっと現れてほしいと思います。例えばDXにより効率化を徹底していく、そんな挑戦的なマインドセットを持つ若手にチャンスを与えて、達成できれば報酬や昇格、失敗してもチャレンジしたことを評価してはどうでしょう。人事制度と連動させメリハリがある評価で人を動かせば、スピードアップを期待できます。
- 木下:
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スピードアップの狙いも込めて事業本部体制を見直し、CVJアクスルと軸受という商品別体制に大きく変えました。同時に地域と事業それぞれの執行役の決裁権限や目標KPIを見直し、事業担当執行役が売上高・利益・在庫・施策などを縦軸としてグローバルに通し、管理する権限と責任を強化しました。今回、在庫削減が進んだのは、国内外での生産改革や生産量調整、物流変更など、製造や生産管理、生産技術部門の方々が取り組んできた施策のパズルのピースが揃い始めたことに加えて、これらの体制整備・変更で国内外事業所の連携が進んだ成果もあります。ただ従業員の意識改革はまだ道半ばであり、若手の活用についてもご指摘の通りで、これからも意識して取り組みます。
コーポレート・ガバナンスの実効性
- 木下:
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コーポレート・ガバナンスについては全執行役の目標管理にESGを盛り込み、評価対象としています。ただ先ほどご指摘いただいた在庫削減以外の主要指標が達成できなかった点、目標をもっと高く設定する点など、目線を上げる、習慣化した意識を変える取り組みとして、ガバナンス面からもう一歩踏み込んで考えていきます。
- 小松様:
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ガバナンスの実効性についてコンプライアンスの観点で見れば、ルールはきちんと整備されており、モニタリング体制も向上しています。国内外関係会社のガバナンスに対するモニタリングの強化という課題に対し、現状はより一層の改善に取り組んでいるところと理解しています。もう一点重要な課題が、海外の子会社の人材評価です。親会社の指示で経営するのではなく、子会社自らが改革と改善に取り組み、経営のレベルを上げてほしいと思います。特に規模が大きな米国と欧州の子会社については当社グループ業績への影響が大きく、現地のマネジメントが自ら進んで改革と改善に取り組み、それを親会社が監督し、評価する形を徹底し、信賞必罰、結果が出なければすぐ替えるくらいの対応が良いと思います。
- 塔下様:
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現時点で課題がほぼ明らかになっていますから、一層スピードを伴った取り組みを期待しています。グループ子会社が日本や欧州、米国に分散しそれぞれに固有の事情があり難易度が高いのですが、リスク度合いに応じ優先順位を定めリソースを集中投下すべきでしょう。製造業ですので工場設備の移転、製造品目転換などには時間がかかります。だからこそ大きな環境の変化を予測して予め準備する姿勢が求められます。また、現場を回って気になったのが、近いうちに到来する労働人口の減少問題です。当社でも5年後には顕在化する従業員の年齢構成の変化を踏まえ、新たな発想で対策を講じるべきと思います。
- 木下:
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子会社も含めてマインドセットを変えるべく、2025年度から「半減活動」を全世界で開始しました。当社のように製造品種数が多く、グローバル展開する会社でコスト構造を改革するには、大きな構造改革と並行して、オペレーションの細部に至る改革の積み重ねとアイデア抽出が必要です。従業員の皆さんには働く現場で非効率さや無駄を発見してもらい、例え小さなものであっても「半減」や「効率の倍増」に取り組んでいただいております。この活動が小さな改善に留まらず、改革の波となって、在庫削減と同様、パズルのピースが揃うことで目標に近づく力になることを期待しています。子会社トップの人材評価や育成についてはタフ・アサインメントとして次世代経営陣の育成ポジションとしても活用しており、中長期的なサクセッションプランの視点からの取り組みも必要だと考えています。
- 塔下様:
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サクセッションプランについては、有事・平時で視点を変えることが必要でしょう。例えば有事では最近注目されているアルムナイなど、一旦退職された方の力を借りるのも一案ではないでしょうか?平時においては、ご説明のとおり候補生に難易度の高い挑戦を通じて、新たな価値創造と成長を実感してもらいたいですね。数字に表れる会社の姿勢も重要で、研究開発費など売上比率で見れば、競合他社と比べても遜色ないレベルですが、設備など投資金額も意識すべきと思います。不確実性が増す未来ですが、環境が変化したときには直ちに手を打てるようさまざまな事態に備えて準備をしておく必要があります。
- 小松様:
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経営トップについては赤字会社には外部からの採用も一案です。赤字を黒字に転換するための構造改革では、業界経験者に限定せず、幅広い人材の活用を検討することが重要でしょう。仮に米国と欧州にある大きな2つの子会社が黒字転換すれば経営状態は一変します。資産を圧縮できればROICも変わってきます。改革を加速し収益力を高めて、できる限り早期にV字回復を果たすという強い意志を持って取り組んでいただきたいです。
- 木下:
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サクセッションプランについては、海外総支配人の若返りと次世代経営陣育成をセットで取り組んでいます。ここにもスピード感が必要というのは理解しています。特に欧米地域の再建は早期に実現したいと考え、欧州地区はCFOが、米州地区は今年度から私が担当し、現地のトップマネージメントとともにスピードアップしてまいります。あわせて執行役の1人がプロジェクト専任として、各地域が連携して生産再編成を推進する体制としました。
成長基盤の強化について
- 木下:
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生産改革、調達改革、物流改革、設計領域の改革は、ICT 面での改革とあわせて実行スピードを速め、成果を早期に創出してまいります。構造改革は目標ではなく手段であり、構造改革を価値創出や成長にどのように結びつけるかが重要だと認識しています。デジタル化も大きなテーマで、日本のホストコンピューターを撤廃して新しい基幹システムへの切り替えを完了し、例えば見積り回答をはじめ業務処理を迅速にできるようになっています。また独自のシステムを活用したモデルベース開発を導入し、お客さまの要望に対して短期間で設計シミュレーションをして提案できる体制を整えています。身近なところでは、執行役自らAIを活用して会議記録を要約し、迅速に関係者に情報を共有するなど、新たな取り組みを開始しています。
- 小松様:
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そのようなデジタル化の推進は、積極的にアピールしていくべきです。個人的な感想になりますが、日本の製造業の現場ではDXはそれほど進んでいないと感じています。あらゆる面でDX 化とAIを活用する取り組みを進めていくのは必然です。他社が進めていない取り組みであれば、IR 面でのアピール効果は大きいと思います。
- 塔下様:
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当社にとって最も優先すべき課題は、生産現場における情報活用ではないでしょうか?生産改革するために必要な情報、販売促進につながる情報、アフターマーケット・ビジネス拡大に欠かせない現場情報などを網羅的に整理した上で活用する。そうした体制づくりをスピードアップしていくべきだと思います。
- 木下:
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情報化やデジタル化を進めた上で、最終的に競争に打ち勝つ力となるのが「モノづくり」や「調達・物流」を含む広い意味での「技術」と、それを支える「人」です。当社の価値を創出し、的確にお客さまに伝え、優位性をアピールしていく人を育成する必要があります。「競合メーカーとの差を生み出す人づくり」について、長期的かつグローバルな課題として注力してまいります。
中期経営計画目標の達成に向けて
- 木下:
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最後に中期経営計画における目標達成のためのアドバイスをお願いします。
- 小松様:
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中期経営計画2年目に向けて社外取締役として言うべきことは、とにかく目標を高く設定し、徹底的にやり切ってくださいと、これに尽きます。株主をはじめとするステークホルダーの視点から見れば、事業環境が厳しい状況下においても、構造改革の歩みを止めることなく、着実に進めることが重要と考えています。その意味では生産現場を回ってみた印象として、効率化の余地はたくさんあると感じました。
- 塔下様:
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構造改革は、中期経営計画に掲げた①事業環境の変化に左右されない企業体質をつくること、②「稼ぐ力」の向上のための手段で、目的ではありません。構造改革には意識改革が最も重要で、意識が変わらないと、改革でなく従来の延長線、すなわち「改善」にとどまってしまいます。風土の一新は簡単にはいかないため、経営陣が繰り返し訴える必要があります。最終的に従業員が自律的に動いた結果として、企業は変わっていくわけです。例えば、在庫削減を最重要テーマのひとつとしている中で、仮に予期せぬ事情で欠品を発生させた際に上司から責められるとどうなるでしょうか。その担当者は意識せずとも在庫を積み増す方向に動いてしまうでしょう。そうではなく、万が一の不測の事態の際には、例えば、航空便を使ってでも納品する対応を許容すれば、会社としての本気度が伝わります。製造業として良品を納期通りにお届けすることは基本であり、その大切な企業文化は十分に培われていると感じます。それが故に、この企業文化を守りつつ、さらなる価値創造に挑戦できるよう、これまでの意識・常識を見直してほしいと願っています。
- 木下:
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お客さまから「明日納品してほしい」と言われたら、無理をしてでも造って持っていく。あるいは「この価格でないと買わない」と言われれば、何とかして合わせるよう原価低減に努める。そのような文化が当社には根づいています。近年はそうしたスタンスの裏側にある問題点に光を当ててきました。もちろんお客さまを大切にしないなどという話では決してなく、けれども当社が存続するためには、何をすべきなのかを考え直す。その結果として今まで以上に価格交渉にも精力的に取り組み、赤字の商品をそのまま放置したりはしない。従来の営業スタンスからすれば大きな転換になりますが、それをやり切る気風が従業員の方々の中に根づき始めています。特にお客さまと関係が1対1となっているCVJアクスルは、不採算型番の削減や無駄な在庫の削減という転換が早く進んでいます。多岐にわたる業界にさまざまな商品を納めている軸受においては、交渉や転換は簡単ではありませんが、それでも確実に進み始めています。
- 塔下様:
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確かに軸受はお客さまの業界が多岐にわたっているので、一律の対応は難しいと思います。例えば、お客さまの実績を調査し、ご提供可能な品番を絞り込む作業は、現場任せではなかなか進まないでしょう。起こるかもしれないネガティブインパクトをどのように判断し、サプライヤーや調達にまで及ぶ影響も踏まえて、どこまで行動に踏み切るのかは経営の判断でしょう。繰り返しとなりますが、改革の成否を左右するのは、経営陣・従業員一人ひとりの意識と行動の変化です。その変化を可視化する仕組みもあわせて構築する必要があります。例えば、アフターマーケットについて2035年度に売上比率40%という目標を掲げていますが、成果の中間点をいつまでに設定しているのかを内外に見えるように示しては如何でしょう?
- 木下:
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アフターマーケット向け売り上げを伸ばす要素はシンプルに言えば2つで、市場そのものの成長に乗る方法と競合他社からのシェア奪取です。足元では市場そのものの伸びが大きくないため、売り上げを伸ばすには、お客さまへの対応や戦略などにおいて他社に先駆けたメリハリをつけた果敢な行動や仕組みが必要であり、アフターマーケット用途ではない在庫を集中的に削減しつつ、必要な在庫の品揃えに注力しています。事業軸強化の一貫として、2024年4月以降は地域と事業のマトリクスで利益、在庫、ROICなどのKPIを設定し、執行役と地域総支配人で共有しています。この考え方を根づかせつつ、在庫削減や事業計画の予実管理などを推進していきます。
- 塔下様:
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そのような動きも随時モニタリングしながら、社内にも情報発信していくべきでしょう。従業員の方々の意欲向上につながる成長投資計画も積極的に情報発信し、中期経営計画の目標達成に向けて確かな歩みを続けていただきたいと期待しています。
- 小松様:
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私も現場を回って主査以上の方にはROICの重要性と改善施策について話をしましたし、従業員のモチベーションに関する情報収集を通じて、建設的な提言を続けたいと考えています。もう一点、女性活用の視点から、各拠点で女性従業員と懇談の場を設けることで、マネジメント層を目指す女性人材の育成を後押しする考えです。
- 木下:
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貴重なご提言を賜り、誠にありがとうございます。「NTN 再生」の実現に向け、改革の歩みを決して緩めることなく、全力で邁進してまいります。
新任取締役メッセージ
社外取締役
和田 浩美
大学卒業後、大手電機メーカーに入社し、約40年間にわたり研究開発・商品企画・品質管理の各分野に従事してまいりました。特に、iモード携帯電話や車載インフォテインメントシステムの開発に携わり、ユーザー視点を重視した商品づくりを推進してきた経験は、私のキャリアの礎となっております。退職後は複数の企業にて非常勤社外取締役を務め、構造改革の推進、新規事業の立ち上げ、事業撤退の判断など、経営の重要な意思決定に関与してまいりました。こうした経験を通じて、技術と経営の両面から企業価値向上に貢献する姿勢を培ってきました。NTNが有する高度な技術力とグローバルな展開力には大きな可能性を感じており、社外の立場から現場感覚と経営視点を融合させ、サステナブルな成長に寄与できるよう尽力してまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。