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2021年度のCSR活動をご紹介します。

脱炭素社会への貢献

当社グループは、脱炭素社会に向け、「風力発電の普及、水素化社会への貢献」、「自動車EV・電動化への省エネルギー(基盤商品)」、「自動車EV・電動化への省エネルギー(新領域)」、「製造設備の高効率化」、「軸受再生ビジネス」の5つの取り組みに注力しています。

脱炭素社会に向けて、当社グループが注力する5つの取り組み

脱炭素社会に向けて、当社グループが注力する5つの取り組み

自然エネルギーを利用した持続可能な社会の実現

風力発電の普及、水素化社会への貢献

脱炭素社会の実現に向け、風力や太陽光を利用して発電する自然エネルギーや、使用時にCO2を排出せず、貯蔵・輸送により必要なときに必要な場所で発電可能な水素エネルギーが、次世代のクリーンエネルギーとして注目されています。
風力発電分野では、耐久性に優れる大型風力発電装置主軸用軸受を開発し、風力発電向けのメンテナンスを開始しました。また、水素関連分野では、水素原子に起因する軸受の早期破損を抑制する耐水素軸受を開発しました。
これら商品開発や事業の取り組みにより、持続可能な社会の実現に貢献します。

風力

カーボンニュートラルの実現に向けて風力発電の進展が期待されています。これら風車の安定稼働のニーズに応えるため、大型風力発電装置主軸受として多く用いられる自動調心ころ軸受において、風荷重などの実際の荷重分布下での寿命向上を目的とした「左右列非対称自動調心ころ軸受」を市場展開しています。また、自動調心ころ軸受特有の差動すべりによる摩耗対策として、ころ表面に耐摩耗性に優れるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を形成し、軸受の信頼性を高めています。
さらに、当社では風力発電の稼働率向上を目的に、風力発電装置用状態監視システム(CMS)「Wind Doctor®」を用いた稼働状況を風力発電事業者に配信するサービスを提供していますが、このたび、風力発電に特化したメンテナンスを行う㈱北拓(以下、北拓)と業務提携し、風力発電向けのメンテナンスを開始します。これまで培ってきた、当社の「Wind Doctor®」による、高精度な軸受の異常検知と不具合部位の特定技術をもとに、北拓が持つ豊富なメンテナンス実績やノウハウを活用し、速やかな保守対応を提供します。これまで、風力発電事業者は、「Wind Doctor®」からの異常診断結果に基づいて、設備点検やメンテナンス業者を手配されていました。今回の業務提携により、補修軸受の手配を含めた一連の業務を当社が一括して行うことが可能となります。事業者の手配工数を削減できるだけでなく、異常検知後に速やかにメンテナンスを実施することで、稼働停止時間を最小限に抑えることが可能となります。
今後、風力発電装置の大型化が進むとともに、洋上風力が主役となってくると、設備の安定稼働のためには状態監視の精度向上と正確なデータ解析に基づく適切なメンテナンスが一層重要になります。これら一連のサービスをワンストップで提供できるサプライヤーとして風力発電装置の市場拡大に貢献していきます。

左右列非対称自動調心ころ軸受

左右列非対称自動調心ころ軸受

Wind Doctor®

Wind Doctor®

水素

省エネルギー化を目的として、油の撹拌抵抗の低減や給油ポンプの小型化などにより、転がり軸受に用いられる潤滑油の低粘度化や供給量削減の傾向があり、軸受にはより過酷な潤滑条件への対応が求められています。このような希薄潤滑のもとでは、潤滑油膜切れが起こりやすく、転動体と軌道輪が接触し、軌道輪表面の新生面が生成すると潤滑油が分解し、水素原子が発生して鋼材内に侵入することで、軸受が早期に破損する場合があります。いわゆる水素脆性です。
当社では、軸受の軌道輪表面に硬質で微細な金属化合物を多数分散させた新規鋼材の採用と、新たに開発した特殊熱処理技術により、水素に起因する軸受の早期破損に対して、当社標準軸受と比較して、3倍以上の長寿命化を実現した耐水素脆性軸受を開発しました。
さらに、この技術は、次世代エネルギーとして注目されている、水素の社会実装に必要な各種インフラ設備への適用を目指していきます。

耐水素脆性軸受

耐水素脆性軸受

エネルギーロスの低減

自動車EV・電動化への省エネルギー

燃費基準やCO2の排出規制規格が厳格化する中、ガソリンエンジン車に代わる電動駆動ユニットで車両駆動する電気自動車の開発が加速しています。電気自動車に搭載されるモータの高速回転に対応した自動車用深溝玉軸受や、ハブベアリングに転舵機能を付与したモジュール商品の開発により、電気自動車の省エネルギー化に貢献しています。

高機能軸受の提供(基盤商品)

EVやHEVに搭載される電動駆動ユニットには省エネルギー化が求められ、さらなる低フリクション化、小型・軽量化の要求が高まっています。当社では電動駆動ユニットの小型化を目的とするモータの高速回転に対応した深溝玉軸受を開発し、高速回転に成功しました。dmn値180万の「EV・HEV用高速深溝玉軸受」として、すでに市場展開しています。当社が長年の基礎研究で培った軸受の内部仕様の最適化、保持器の形状および材料見直しによる高強度化、保持器とポケット部形状の適正化による、遠心力下での保持器変形の抑制を盛り込みました。これらの技術により、軸受回転時の摩擦抵抗によるエネルギーロスを最小化し、高速回転を実現しています。従来品と同一寸法のため、既存品との置き換えが可能で、グリース潤滑・オイル潤滑の両方の環境下で使用できます。
近年、発熱を抑える冷却効果に優れたオイル潤滑のモータが増える傾向にある中、オイル潤滑向けで多数のお引合いをいただいています。
*dmn値:軸受の回転性能を表す指標 転動体ピッチ円直径mm×回転速度min-1

EV・HEV用高速深溝玉軸受

EV・HEV用高速深溝玉軸受

高機能モジュール商品の提供(新領域)

世界No.1シェアを誇る当社のハブベアリングで培ってきた技術を駆使し、左右の転舵角度を個別に補正する後輪用ステアリング機能付ハブベアリング「Ra-sHUB」を開発しました。
市場にある後輪転舵システムは、高級車に採用されるマルチリンク方式などの一部の懸架装置にのみ搭載が限定され、そのままの構造では大きな転舵角をとることは困難です。
「Ra-sHUB」は、当社のハブベアリングに、独自の技術で転舵機能を付与したモジュール商品です。既存のハブベアリングのように小型で、懸架装置の種類を選ばず搭載でき、後輪転舵を実現します。前輪の転舵角や走行情報から後輪タイヤの転舵角度を左右別々に制御することで、車両のコーナリング性能や高速直進安定性を向上させることができます。低速時には最小回転半径を小さくして車両の小回り性、タイヤの走行抵抗を抑えることができ、将来の自動運転の省エネルギーにも寄与する商品です。

「Ra-sHUB」の特徴

  • ハブベアリングに転舵機能を付与したモジュール商品
  • 後輪の角度を左右独立で制御
  • 転舵角±10°
  • 車両のコーナリング性能や高速直進安定性を向上
  • 車両の最小回転半径を低減

Ra-sHUB

Ra-sHUB Ra-sHUB

製造設備の高効率化

機械設備に組み込まれている軸受に異常が発生すると、設備の性能が劣化するため保全停止が必要になります。しかし、軸受の状態を適切に把握していれば、適切なタイミングで対処してトラブルを予防できます。風力発電装置用状態監視システム「Wind Doctor®」による状態監視サービスに続き、工作機械向け「センサ内蔵軸受ユニット」や、「軸受診断エッジアプリケーション」の体験版を開発し、さまざまな用途で評価を進めています。

工作機械向け「センサ内蔵軸受ユニット」

工作機械向け「センサ内蔵軸受ユニット」

軸受診断エッジアプリケーション

軸受診断エッジアプリケーション

軸受再生ビジネス

当社は、製紙用超大型軸受、鉄鋼用大型軸受、鉄道車両用軸受など、さまざまな機械設備で使用された軸受の再生事業への取り組みを進めています。
使用されている軸受に不具合が発生する前に当社の技術ノウハウに基づく再生加工を施すことで軸受寿命を延ばすことができ、お客さまのコスト削減や購入リードタイム短縮につなげることができます。新しい軸受を製造するよりもエネルギーや鋼材などの資源や温暖化ガスの排出を低減できるので、この取り組みを通じて環境負荷低減と循環型社会の実現に貢献していきます。

製紙機械用超大型スフェリカルローラ軸受

製紙用超大型スフェリカルローラ軸受

環境貢献商品の開発

当社は、企業理念として「新しい技術の創造と新商品の開発を通じて国際社会に貢献する」を、環境基本方針の第1項には「自社技術による地球温暖化防止への貢献」を掲げて事業活動を展開しています。当社の主力商品である軸受やドライブシャフトなどは、最終製品のエネルギー損失低減に寄与するため、そのすべてが環境貢献商品ということができ、その中には、先人の功績としてすでに広く社会に普及しているものと、当社の技術力・開発力によりさらに環境貢献度を高めたものが含まれます。また、自然エネルギー商品は、再生可能エネルギーを創出することで、CO2排出量の削減につながる環境貢献商品です。
当社では、それらの環境貢献度を当社基準に基づいて数値化し、よりグレードの高い環境貢献商品の開発・提供によって企業理念を具現化するよう不断の努力を続けています。

環境貢献商品の定義

NTN商品の分類・グレードと定義

NTN商品の分類・グレードと定義

環境ファクタ・環境効率の算出方法

環境ファクタ・環境効率の算出方法

取り組み成果の推移

当社売上高の約5割を占める主要製品であるドライブシャフトおよびハブベアリングと、自然エネルギー商品の2022年3月期のCO2削減貢献量は139.8万トンとなり、近年の開発成果と言えるS~B-ecoグレードの環境貢献商品の売上比は、2022年3月期には55.9%となりました。

売上高の推移

売上高の推移

環境貢献商品グレード構成比の推移(ドライブシャフトおよびハブベアリングなど)

環境貢献商品グレード構成比の推移(ドライブシャフトおよびハブベアリング)

CO2削減貢献量

CO2削減貢献量