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2019年度のCSR活動をご紹介します。

第三者意見

「NTNレポート2020」第三者意見書

写真:高崎経済大学 経済学部 教授 水口 剛 様

高崎経済大学 経済学部 教授
水口 剛 様

略 歴:商社、監査法人勤務などを経て、1997年に高崎経済大学経済学部講師、2008年より現職。
専門は、責任投資、非財務情報の開示。
環境省グリーンボンド検討会座長、ESG検討会委員、環境経済・政策学会理事などを歴任。
主な著書に『責任ある投資-資金の流れで未来を変える』(岩波書店、環境経済・政策学会論壇賞)、 『ESG投資― 新しい資本主義のかたち』(日本経済新聞出版社)、 『サステナブルファイナンスの時代―ESG/SDGsと債券市場』(編著、きんざい)など。

経営トップのメッセージに危機感が滲んでいます。新型コロナウイルスのために世界中で多くの企業が苦境に陥っていますが、御社も2021年3月期を「危機対応期間」と位置付けました。そんな中でもESG経営の強化を掲げ、気候変動への対応でも変わらぬ姿勢を示されたことはよかったと思います。欧州を中心に「グリーン・リカバリー」が提唱され、コロナ禍からの復興をグリーン経済の構築につなげようという動きになっています。その動きにしっかり貢献し、危機をチャンスに変えてほしいと思います。
また今回のコロナ禍は、ESGの「S」の課題への注目を高めました。感染症対策を取ろうにも取れない人々の存在は、経済的不平等が命の不平等であることを浮き彫りにしたからです。御社は危機対応の第1に「従業員の健康と安全の確保」をあげており、この点は評価したいと思いますが、今後はサプライヤーや協力企業も含めて、より広い意味で「S」への取り組みが求められると思います。さらに欧米ではBlack Lives Matterの運動が過熱する一方、中国でも新彊ウィグル自治区の問題に加え、様々な面で人権への懸念が焦点となっています。2020年7月に人権基本方針を定められたことを評価しますが、近い将来、現場レベルの判断だけでなく、経営上の判断が問われる場面が来るかもしれません。
今年も、社外取締役のお二人の対談をたいへん興味深く読みました。4ページにわたってじっくり語り合っておられ、取締役会での議論の様子を彷彿とさせます。今回、スキルマトリックスを作成し公表したこともよかったと思います。さらに取締役選任基準も公開され、コーポレートガバナンスの透明性が高まりました。
最初はスキルマトリックスの中に「サステナビリティに関する知見」という項目があるとよいのではと思いましたが、取締役選任基準の中に「環境、社会の変化に対する先見性、洞察力」という項目があり、スキルというより資質として位置づけられていることがわかりました。取締役会に初めて女性が加わり、多様性も高まりました。社外取締役の比率も高く、ESGのかなめの「G」をきちんと働かせようという意志が伝わってきます。
その意味では、サステナビリティに関わる委員会が執行側にしかないのはやや惜しい気もします。もちろん実務的な部分は執行側の役割ですし、マテリアリティの特定などは最後は取締役会で決議するのだと思いますが、社外取締役を中心に、執行側のサステナビリティ委員会と対になるような仕組みを正式に位置づけてみるのも一案ではないでしょうか。そして、たとえば気候リスクや社会の分断リスクといった世界の課題に対して、御社はどう向き合い、どのように社会的役割を果たしていくのか、といった経営の大きな方向性について、大所高所から、かつ長期的視野で議論されることを期待します。

第三者意見を受けて

写真:執行役常務 CSR(社会的責任)推進 本部担当 白鳥 俊則

執行役常務
CSR(社会的責任)推進本部担当
白鳥 俊則

水口先生には、貴重なご意見を賜り厚く御礼申し上げます。

当社は2021年3月期を「危機対応期間」と位置づけ、事業運営方針のひとつ「将来の成長に向けた準備」の中で、当社が優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定し、重要課題への対応を事業戦略に落とし込むことでSDGsの目標達成に貢献していくことを目指しています。

今年度は新たに人権基本方針を策定しました。これは、当社グループのみならず、当社グループのサプライヤーに対しても人権の尊重を働きかけていくものであり、世界で起きている課題に向き合い、人権デューデリジェンスの仕組みを構築します。お示しいただきました気候リスクや社会の分断リスクといった世界の課題への対応は、とても大事な視点と受け止めております。

また、サステナビリティ委員会で検討した重要課題は、取締役会のなかで長期的な視野で決議いただき経営の大きな方向性に結び付くよう取り組んでいきます。

今回いただいた貴重なご意見を真摯に受け止め、中長期にわたる企業価値の向上に努めてまいります。