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2017年度のCSR活動をご紹介します。

社外取締役対談

コーポレート・ガバナンスにおける課題や当社が今後、持続的成長と企業価値の向上を目指す上での取り組みなどについて、ざっくばらんで、かつ、辛口の本音を語っていただきました。

和田 彰

2005年6月  日立造船株式会社 常務取締役
2006年6月  株式会社ニチゾウテック 常勤監査役
2011年6月  当社 社外取締役(現任)

津田 登

2005年6月  三菱化成工業株式会社(現 三菱ケミカル株式会社) 執行役員
2014年4月  株式会社三菱ケミカルホールディングス 代表取締役副社長執行役員
2016年6月  当社 社外取締役(現任)

テーマ1 NTNが抱えるガバナンス上の弱点は何か。

津田:

NTNの場合、拠点が点在化していることで、売上を上げても規模のメリットがなかなか出てきません。各拠点では繁忙でも利益がついてこない、難しい業種であることは確かです。通常集約化することによって、段取の回数を下げる、あるいは在庫の管理をしやすくするということを考えるのですが、NTNはそういう集約化ではなく、点在する各拠点をシステムによって効率化する方向に進んでいます。規模拡大に応じた均一品質の確保はとても難しいといえます。ここは、将来のガバナンス上の問題になりうるでしょう。品質、コスト競争力も把握しているのか。買収した会社も含め、拠点数が多いので、全体を把握して問題に手を打つのは大変で、協力会社を含めた最適化には大きな労力が必要となります。

和田:

NTNの本社部門はグローバル本社という自覚を持つべきだと思います。人事、法務、さまざまな機能はあるけれども、NTN単体、子会社の中の主に国内を見ているような印象を持ちます。さまざまな施策を打つときに日本だけを見ていてはいけません。本社機能がグローバル化を進めようとしているが、それができるか、現在はその過渡期にあると思います。今の取締役会に出ていると、国内のことを一所懸命考えているという気がします。

津田:

グローバルという認識はあるのですが、取締役会の議題は国内ベースのものが多いのは事実でしょうね。そういう意味でグローバルな視点が少し弱いといえます。本社がグローバルのホールディングカンパニーとして機能しないといけませんし、今後グローバルで見るという組織形態に変わらざるを得なくなると思います。
さらに私は、責任ある収益管理体制の構築が重要だと感じています。国内を中心とした、責任体制は確立しています。しかし、事業本部長は国内にしかおらず、海外はグローバルな管理体制での責任の所在が明確になっていません。ベアリングについては、産業機械で使われるか、自動車関連事業で使われるかというように、同じ製品で用途が違うこともあるので難しいのは分かりますが、事業本部長は国内のみでなく、グローバルに責任を負うものでなければなりません。そこが曖昧です。マトリックス管理組織は一見するとうまく機能しそうですが複雑な構造のため一元化しないので、ガバナンスが効きにくいといえます。

和田:

この問題は難しいです。ベアリングを各拠点でつくっていますが、自動車だけではなく、産業機械にも使われています。従って、海外などは地域ごとの責任体制になってきますが、何か問題が起きたとき、責任の所在がどこにある分かりません。これが、NTNの弱点です。

テーマ2 取締役会はどのように機能しているか。
              異業種とのコラボレーションについて取締役会で議論されているか。

和田:

NTNの社外取締役になり、2018年で7年目になります。最初は、取締役会に活力がありませんでした。執行役員会で議論した内容を追随するような形式的な取締役会だったといえます。例えば、席次についても社外取締役は端の方に座り、私たちから何かを聞いて反映するというよりは、報告しておくという取締役会でした。しかし、現在はかなり活発な意見も出るようになって、昨年からは議長前の席が社外取締役席となりました。このような取り組みの結果、就任当初よりは発言しやすい雰囲気が出てきたと感じます。
しかし、異業種とのコラボレーションなどの具体的な話はほとんど出ていません。やはり今後、ベアリング会社としてどういう方向にもっていけば良いのかという、従来の延長上の議論が多く、エンドユーザに近い視点の議論は多くありません。

津田:

中期経営計画策定の段階で、新規事業をどうするかという点は取締役会で議論はあります。しかし、風力や水力なども取り組んではいますが、当初の計画通りには、なかなか進んでいないことも事実です。技術を開発している人たちはしっかり新商品を開発していますが、マーケティングになると難しいといえます。同じユーザに対して新商品を提供することはできても、違う分野にいく場合、マーケティングでの対応が難しい。きっちりとしたイメージを描いていくことは、例えば環境分野においても大きな社会的課題を解決することができ、従業員のモチベーションにもつながります。そういう意味ではマーケティングを強くしてかないといけないのですが、「言うは易く、行うは難し」の状況です。マーケティングに十分な人材を割り当てられるか、そこは社外取締役としても訴えないといけないと考えており、自動車産業関連事業中心の現状から脱却できるよう今後も発言していきたいと考えております。

テーマ3 「もの造り」「ひと造り」において、NTNが競争優位となりうる点と、
     今後の持続的成長を目指す上で支障になりうる課題は何か。

津田:

一般的に、製造業の技術優位性は「何をつくるのか」がとても重要です。技術陣は自分たちの技術を突き詰めていきます。その結果、「こんなに品質が高い、良いものができた」というのですが、最も肝心なことは「それを市場がどう評価するのか?」ということです。ただ、この業界で技術の優位性を競うのはなかなか難しいといえるでしょう。そういう意味で、普通の製造業のように売れる良いものをつくる、市場に評価されるというよりは、高い品質と定められた納期で、より競争力のある価格の製品を愚直に生み出すことに重点が置かれているのではないでしょうか。
一方、NTNが「市場のニーズがどこにあるのか」「自社のどの技術に優位性があるのか」といった点をより明確に認識できるよう、技術優位性として何があるのかを社外取締役として、きっちりと評価しておかなければならないとも考えています。

和田:

ベアリングはさまざまなものの技術的なベースになる製品です。NTNにしかできないもの、既存のユーザサイドから求められた製品をつくることが重要で、品質でほかと差別化できる特殊なものではありません。エンドユーザと直接的に接点があるわけではなく、自動車メーカや産業機械メーカで自社製品が組み込まれた最終商品が組み立てられて売られていくという事業形態です。今後、ベアリングとして提供される技術的な素材だけで良いのか、それとも、エンドユーザに近づけていくのか、今のところどのベアリングメーカも定めていないように思われます。しかし、ぼやぼやしていると、この100年で築き上げられた製造ノウハウの特異性・優位性を新興国にとられてしまう懸念があります。
今後の100年を考えると、よりお客さまのソリューションビジネスに近いビジネスの構築が必要ではないでしょうか。いったんシステムの中に組み込まれたら、同業他社に置き換えることができない、互換性がなく、それゆえお客さまに求められるシステムに直結するようなソリューションビジネスの世界に踏み込んでいく必要があると感じています。

津田:

そのためには、さまざまな業種と協働していかなければなりません。単一事業体でできることには限界があると思います。どことコラボレーションするのかが重要です。そのためには、エンドユーザと近い企業と早い段階で取り組まないと難しいのではないでしょうか。エンドユーザに近い企業といってもさまざまな業種があります。私が在籍したケミカルカンパニーは、財閥系だったこともあり、さまざまな業種との接点が多かったです。
和田取締役のおっしゃるように、ソリューションビジネスを推進していくには、自動車メーカに聞いても方策は出てこないと思います。なめらかにする技術をどのように応用していくのかを、自動車産業とは異なる業種と進めていく必要があるでしょう。自動車もベアリングも寡占業界であり、そのような環境でNTNにしかできないものは何か。通常用途では生産効率をいかにあげるか、コスト競争力をいかにあげるか、品質・納期そして全体の効率をいかにあげるかが重要でした。新規ビジネスについては、異業種とのコラボレーションができるかどうかもポイントになると思います。

和田:

自動車関連事業や産業機械関連事業において、確かな製品を提供する技術力について、NTNは問題ありません。しかし、自動車関連事業への依存度が大きすぎて、新しいビジネスに結びつけるための異業種とのコラボレーションや、異業種のニーズに対してソリューションを提供するという観点から見るとまだまだ足りません。まず、ソリューションを提供するには、マーケティングをする人間がニーズを拾い上げてきて、それを取捨選択できる能力をもった人材が必要だと思います。

テーマ4 NTNが抱える人材育成についての課題は何か。

和田:

NTNは人材育成を平均以上に行っている良い会社です。売上も利益もあげている立派な会社です。だからこそ、この会社には、もっと夢を抱いて頑張る人材に来てもらいたいと思っています。全国区でブランドイメージがまだまだ浸透していないと思われるなか、2018年3月期に始めたコマーシャルはかなり寄与していると思います。しかし、その一方で物足りなさを感じます。大阪の企業なのに大阪での認知度があまり高くない。今後は人材が豊富な東京でどれだけ浸透していけるかも重要で、そういう意味では魅力のある仕事を任せてくれるという点をアピールしていくことも重要ではないでしょうか。

津田:

確かにロケーションやコマーシャルも重要ですが、入社した人材をどう育てるのか。育成計画を入社段階で明確にすることも重要だと思います。
人材の配置にはゆとりをもたせる必要がありますが、現在はその余裕がありません。しかし、今後の人材育成を考えると、現場で省力化しながら、同時に人材には余裕をもたせて海外に出していけるような仕組みづくりを、本社組織が知恵を絞って考え、実行しなければならないのではないでしょうか。さらに、本社組織自身にもグローバルな経験を持った人材を配置しないといけないと感じます。

テーマ5 社外取締役として言いたいこと。

和田:

経営幹部には、おとなしくまじめな人が多い印象ですが、そこがとても良いと思う反面、物足りない感じもします。NTNの役職員にはもっと覇気をもってやってもらいたい。また、お客さまとの接点をもっている従業員には、ブランドイメージを意識して取り組んでもらいたいです。ただ、ブランドイメージを高めていくにはどうしたら良いかについては、全従業員で考えることが大切です。100周年のタイミングでTVコマーシャルを制作しました。これによってNTNと全く縁のなかった人たちもNTNを知ることになったので、これを機にブランドイメージ向上に努めてもらいたいと思います。

津田:

異業種からNTNに就任しているので、内部の人には見えていないことが多く見えています。NTNは、狭い業界で長い歴史をもっている会社ですが、一方で、外のことをあまり知らない。今は社外取締役としてNTNの風通しの良さを感じており、意見を言えることがとても楽しいと感じています。取締役会では、私たち社外取締役が意見することも多々あり、長時間に渡って忌憚のない意見をぶつけ合います。NTNには伸びしろがたくさんあります。それにどれだけお役に立てるか。それが私たちの使命だと考えています。

和田津田:

ベアリング業界は産業のコメなので不要になることはありません。それ故か、危機意識を持つ必要がありませんでしたがその分、もっと良くなる要素がたくさんあります。それをどの分野でどれだけ発掘し、どのように変えていくか。それがわれわれの役割ではないでしょうか。